実際に3回乗車してみた感想は…

 E26系は1編成しか作られなかったから、カシオペアは毎日運行できなかった。週に3往復で、1日は点検のため休み。夏休みなど繁忙期は上野発、札幌発ともに隔日運転となった。とても人気のある列車で、誰もが都合の良い週末などは入手困難だった。「空室を探し、チケットが取れたら休暇を取る」という逆転の発想が必要だ。これは現在も走る寝台特急「サンライズ」にも通じる。

 筆者はカシオペアに3回乗車した。1回目は2010年2月、母と北海道を旅した帰路で東室蘭から上野まで。寒いプラットホームに母と2人で待っていると、ディーゼル機関車にひかれた列車が到着した。銀色に鈍く光る車体が救いの神のように見えた。

 カシオペアツインの階下室に入り、ウェルカムドリンクで一息ついたところでダイニングカーへ行き、フランス料理のフルコースを楽しんだ。食後はラウンジカーに行ったが、夜行列車の車窓風景は真っ暗。ときどき通過する踏切や駅が、流れ星のように現れて消える。

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 2度目のカシオペア乗車は2014年9月だ。何度か仕事を手伝ったお礼にと、会社員時代の先輩で、フリーライターになってからも付き合いのある編集長から誘われ、カシオペアスイートのメゾネットタイプに乗った。まず羽田空港から千歳空港まで飛び、札幌発上野行きに乗った「0泊2日」の、カシオペアに乗るためだけの旅だ。ちなみに鉄道ファンではない先輩に上り列車をオススメしたのは筆者だ。展望ラウンジの眺望を楽しめるからである。

 語りたいときは語り、ひとりになりたいときは上下階に分かれる。オッサンふたりにとって、メゾネットは良い距離感だった。このときはフルコースの予約をせず、パブタイムにダイニングカーへ行った。

パブタイムに食べたソーセージ盛り合わせ(筆者撮影)
パブタイムに食べたピザ(筆者撮影)
朝食。手前が和定食、奥が洋定食(筆者撮影)

 3度目は2015年11月、また別の会社員時代の先輩と、カシオペアツインの平屋タイプにて。

天井が高いので、上階タイプ、下階タイプよりも広く感じる平屋タイプ。上段ベッドを折りたたんだ状態(筆者撮影)
このときは二段ベッド上段のエキストラベッドをセットして、ソファはいつも居間として使えるようにした(筆者撮影)

 先輩の要望でディナーはフルコースを予約した。朝食も和定食を食べた。当時は青函トンネルの最深部に青と緑の照明があって、通過時はそれを観ようと大勢の人々がラウンジに集まっていた。2カ月前に寝台特急カシオペアの2016年廃止が発表されたばかりで、乗客のほとんどが鉄道ファンだった。