5時間の探索の果てに初めて滝を目にできたが…
探索開始から5時間、はじめて乙姫滝が見えた。しかし、それは予想通り滝の上部で、滝が流れ落ちる上の部分が少し見えるだけだった。
予想外だったのは、滝の上部は石積みで護岸が設けられていたことだ。ロープから手を離したら滝に転落する状況だったが、なんとかスマホで撮影し、林道に戻った。
滝よりも下流側はさらに急峻な斜面になっているうえ、滝の分だけ高低差が増す。このロープでは距離が全く足りないことは明白だが、それでも上から見下ろす形で滝が見えるかもしれない。そう思って下りてみたが、木々に阻まれ、滝は全く見えなかった。
これ以上は下りられないが、水平に移動すれば滝が見えるかもしれない。少し頑張ってみたが、巨大な一枚岩で木も生えていないため、掴まるものが何もない。寝そべって接触面積と摩擦を増やし、滑り落ちないように頑張ってみたが、断念せざるを得なかった。
この時のことを、同行者は「(筆者の)最期の姿を見届けることになるのかと思いましたよ」と振り返っている。
なす術がなくなった我々は撤退を余儀なくされ、歩いてスタート地点まで戻ってきた。しかし、まだ諦めた訳ではない。この土地の所有者と会って、突破口がないか話を聞いてみることにしたのだ。
「無理無理、ドローンじゃないと無理だって」
事前に立ち入る許可はいただいていたが、会うなり、本当に行こうとしていたことに驚かれた。
「今まで頑張ったんですけど、ダメでした。何かいいルートはないですか?」と尋ねてみたが、「無理無理、ドローンじゃないと無理だって」という答えが返ってきた。
なおも食い下がると、「夏だったらウェットスーツを着て川の中を歩いて行けばいけるかな」
「今行きたいんですけど、何か方法はないですか?」
「上の林道から、100メートルのロープがあったら下りられるけど……」
解決策の見つからないやり取りが続いた、
その後、林道から降下する地点を詳しく聞いたが、我々が30メートルのロープで下りた地点で間違いなかった。あの先、さらに70メートルのロープがあれば、川に下りて滝が見られたというわけだ。

