「名古屋の国道沿いにのみ存在する金シャチの謎を解明してほしい」

 そんな依頼が届いたのは、今年2月のことだった。メールの主は、名古屋で地元に根差した活動を行っているライターの大竹敏之さん。大竹さんによると、国道41号の高岳交差点から清水口交差点の約1キロ間にのみ、歩道のガードレールに金シャチをあしらったレリーフが200個以上設置されているという。金シャチとは、名古屋城の天守閣を飾る金のシャチホコのことだ。

名古屋城の金シャチ
柵の上に設置されている金シャチ

 大量の金シャチを、いつ誰が何のために設置したのか調べているが行き詰まり、道マニアの私なら何か分かるのではないかと思い、依頼したのだという。大竹さんは、国道41号を管理する国土交通省の出張所に問い合わせたが、「古いことで資料もなく何も分からない」という回答だった。沿道で聞き込みも行ったが、何も分からなかったという。7月に出版される大竹さんの新刊に載せたいということで、時間も限られている。

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1キロの間のみに設置された「謎の金シャチ」

 国道を管理する国土交通省が分からないのだから、これは大変な調査になりそうだと感じていた。私が時々出演しているCBCテレビの道専門番組「道との遭遇」のスタッフに雑談として話したところ、ぜひロケを行って解明しましょうという流れになった。

 日曜日の朝7時、大竹さんにもお越しいただき、ゴールへの道筋すら全く見えていないなか、調査とロケがスタートした。

 まずは2人で現場の確認を行う。国道41号は南北に走り、この辺りは名古屋空港にアクセスするため“空港線”の愛称で知られる区間だ。

国道41号の上には名古屋高速が走っている

 その上を名古屋高速の高架が覆うようにして伸びている。国道の車道と歩道を隔てる柵の上に、金シャチが確かに設置されていた。樹脂製の直径10センチほどのレリーフで、色褪せてもいない。それほど昔の物ではなさそうだ。

謎だらけの金シャチ

 日光が当たると金色に輝き、一見するとデリネーター(道路でよく見かける反射板、運転者の視点を誘導するための装置)のようにも見える。しかし、この大きさではあまり目立たず、車で走っている人はほとんど気づかないだろう。私もこの国道を車でよく走っているが、大竹さんに言われるまで金シャチの存在には気づいていなかった。

 南北に延びる国道の左右両方の歩道を歩き、まずは金シャチの数をカウントしてゆく。清水口交差点から南に向かい、高岳交差点で折り返すことにした。