大阪府箕面市に、かつて日本一の動物園があったことをご存知だろうか。大阪府出身の私も、つい最近まで知らなかった。

 箕面市は大阪府の北部に位置する人口14万人ほどの街で、面積の約3分の2を山林が占めている。名所である箕面の滝は週末になると多くの観光客でにぎわい、山麓には高級住宅が立ち並ぶ。ベッドタウンと観光のイメージが強い箕面市には、巨大な温泉レジャー施設がある。箕面温泉スパーガーデンだ。古くから関西一円でテレビCMを放映していたため、ご存知の方も多いのではないだろうか。

箕面温泉スパーガーデン正面入口

“日本一の動物園”と謳われた“箕面動物園”

 箕面温泉スパーガーデンが開業する前、そこに日本最大規模の動物園があった。

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 明治43年に開業した“箕面動物園”は、東京の上野動物園、京都市動物園に次ぐ当時としては日本で3番目となる大規模な動物園だった。総面積は10万平方メートルに及び“日本一の動物園”と宣伝されていた。園内には多くの動物のほか、遊具や舞楽堂、財界人クラブなどもあった。

©箕面温泉スパーガーデン

 大正5年に閉園してから100年以上が経過しているが、動物園の痕跡が今も残っているという話を耳にした。そんなことを聞くとすぐにでも見たくなってしまう私は、早速現地に向かった。

 阪急電鉄の箕面駅から現地へ向かっていくと、まずは巨大なエレベーターが目に入る。山麓の温泉施設にアクセスするための展望エレベーターは60メートルもの高さがあり、圧倒的な存在感だ。

圧倒的な存在感を放つ展望エレベーター

 動物園の痕跡は箕面温泉スパーガーデンと箕面観光ホテルの敷地内にあるため、無断で立ち入ることはできない。両施設を運営する大江戸温泉物語に許可をいただき、動物園の痕跡を求めて探索を開始する。

鍵を開けていただき、動物園跡エリアに進入する

 山の中へ入るべく立入禁止エリアの階段を上ると、左側の斜面に穴が開いていた。

 穴はレンガで巻かれており、トンネルのように見える。しかし、これはトンネルではない。これこそが、動物がいた檻なのだ。

トンネルのように見えるが、これが動物の檻の跡だ

 早速現れた動物園の痕跡に、興奮が隠せない。