無数の廃道が生まれたワケ

 つづら折りの車道もあれば、獣道もある。それら全てが、今は使われていない廃道だ。遊歩道らしき道を歩いていると、庭園風に造られた場所を発見した。

今は使われていない庭園風に造られている場所もあった。無数の廃道が見えるが、明治時代から使われていたものもある
庭園にあった石橋

 小川にはアーチ構造の石橋も架けられている。動物園時代の遊歩道を整備してその後も使われていた道で、スパーガーデンができたことにより廃道となった。

動物園時代の遊歩道と思われる道をゆく

 庭園から階段で斜面を上がると、上に神社があった。こちらはスパーガーデン時代に建立されたもので、防火や安全を祈願し、今でも定期的に従業員さんが訪れているとのことだった。

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立入禁止エリアにある神社への入口
今も月に1度程度、従業員さんが訪れているという神社

 朝から探索を開始し、夕方が近づいていたが、まだ箕面動物園全体の半分も探索できていない。敷地が広大なうえ、各所に各時代の歴史が重なり合っていて、魅力が尽きないからだ。夕暮れが迫っていたため、最後に私が確認したかった場所に向かった。

 これは完全に個人的な話になるので恐縮だが、実は今から約45年前、家族とスパーガーデンを訪れたことがあった。当時、私は3歳だったためかすかな記憶しかないのだが、広いプールで泳いだのを覚えている。

筆者が3歳の頃、スパーガーデンのプールで泳いでいた写真

 写真も数枚だけ撮っていて、実家で見たことがあった。現在のスパーガーデンにもプールがあるのだが、どうも記憶のプールとは違うように見えた。

現在のプール

 広告担当の東野さんに尋ねたところ、現在のプールは平成18年にケーブルカーの山上駅跡地に造られたもので、それ以前は少し離れた場所にもっと大きなプールがあったという。事情を説明し、かつてプールに行くために使われていた通路に特別に入らせて頂いた。

プールの表示をたどって当時のプールに向かう

 “プール”と書かれた当時の案内を見ながら進むと、大きな橋が現れた。少々ボロボロになってしまった橋を眺めていると、当時の記憶が蘇ってくる。3歳だったが、プールに行くために橋を渡った記憶があった。プールでのエピソードはほとんど覚えていないが、橋のことだけは覚えていたのだ。

プールの手前に現れた巨大な橋。この橋を見て、3歳の頃の記憶が蘇ってきた

 幼少期の思い出に浸りながら橋を眺める。橋は老朽化しているため現在は渡ることが出来ないが、橋の向こうにプールは見えない。橋の先で通路は途切れ、プールがあった場所には大きなマンションが建っていた。プールは残っていなかったが、こうした変遷もまた、非常に興味深いものがある。

本館からこの橋を通って谷の向こうにあるプールに向かっていた。当時のプールは現在マンションになっている

 箕面の魅力は、自然公園や温泉だけではない。スパーガーデンの敷地内には、日本における私鉄経営の原型となった箕面動物園から温泉の開削、現在に至るまでの歴史が詰まっている。そして、ただ歴史が詰まっているだけではなく、積み重なった歴史の片鱗を今でも見て感じ取ることができるというところに、私は大きな魅力を感じた。

 誰もが動物園の檻を直接見ることは難しいが、温泉に漬かりながら周辺の山々を見渡せば、きっとまた違った景色に見えることだろう。箕面温泉スパーガーデン自体にも60年以上の歴史があり、泊まってゆっくり館内を歩くと、今とは違う入口や通路を発見できるので、それも楽しそうだ。

 大江戸温泉物語が運営する箕面温泉スパーガーデン及び箕面観光ホテルは、2025年3月31日から施設メンテナンス工事のため、1年間以上の長期休館が予定されています。