追い込み漁が禁止になった今でも漁の名残を見ることができる。最も海に近い穴の中に水中カメラを入れてみると海とつながる通路がいくつも開いていた。
通路の仕組みだが、まず海に面した穴へイセエビが侵入し、壁をたどるうちに別の通路に差し当たる。通路を通って隣接する穴へ進み、またさらに奥へと進むうちに引き返せなくなり、翌朝漁師によって回収される仕組みだ。まさに文字通り追い込み漁なわけだ。
場所によっては長い通路もあり、ここをイセエビが歩いていることを想像すると警戒心とかないのだろうかと疑ってしまう。後ろを振り返らない生き方は尊敬に値する。
さらに漁師さんがいうに、穴はツルハシなどの工具であけられたそう。人力で磯に穴をあけるなんて、現実的ではないように思える。ただし、この一帯の磯は砂岩や泥岩で構成されているため地質が脆く簡単に掘れたかもしれない。
実際に、火山岩で構成される伊豆半島の磯に比べ、房総半島の磯は濡れるとつるつると表面が溶けて滑りやすく、フェルトスパイクといったシューズを履かないと危険な磯である。このように加工しやすい地形ゆえに生まれた漁でもあるのだろう。
生き物の住処となった穴で何か釣れるのか?
今回の目的は穴の謎の解明、そして釣り人として、この穴に現在生息する魚を調査してみること。もちろん漁業権のかかったイセエビを釣るわけではなく、あくまで漁業権のない魚に限る。はたして何が釣れるのだろうか?
まずは小物釣り用の延べ竿を用意してお風呂型の穴に仕掛けを投入してみる。虫エサの付いた針を穴底まで落とすとプルプルしたアタリが手元に伝わる。小気味いい引きで上がってきたのは小さなササノハベラ。
小さな魚でも小物専用竿で釣ると面白い。立ち位置をずらして仕掛けを投入すると今度はトロピカルカラーのニシキベラがヒット。
大物を狙うときはエサ取りとして名高いラインナップだが、狙って釣れるとこれが嬉しい。さらなる魚種を求めて穴を移動してみることに。






