藤井聡太名人に永瀬拓矢九段が挑戦する第83期名人戦(主催:毎日新聞社・朝日新聞社・日本将棋連盟、協賛:大和証券グループ)七番勝負は、藤井が連勝して第3局を迎えた。舞台は大阪府泉佐野市「ホテル日航関西空港」ジェットストリーム特設会場。2局続けて空港での対局だ。

第3局では後手番となった藤井聡太名人

クラシカルな戦型に令和の思想も取り入れる藤井

 後手の藤井は2手目で角道を開ける。おっ、今年3月の王将戦第5局に続いて藤井にとって棋士人生2度目の△3四歩だ。そして細かな工夫をする。

 王将戦ではすぐに△4三銀と上がって雁木を表明したが、本局では4三のマス目を空けたまま手を進める。先手側は雁木に対しては▲4六銀の早繰り銀が、矢倉には5六銀型からの右四間飛車が有力策とされている。そこで後出しで良い形をつくるといういわば「後出しジャンケン」だ。

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 永瀬が3七に銀を上がったのを見て、藤井は矢倉を選び、永瀬も矢倉に組んで、相矢倉に。クラシカルな戦型となったが、藤井は令和の思想も取り入れる。居玉のまま9筋の歩を突いたのがアクセント。もし端を突き越せば、玉を中住まいか右玉にするつもりだ。永瀬が端を受けたので藤井は玉を左に移動させた。

 永瀬が3筋の歩を交換させれば藤井は4筋の位を取り、角を上がって対抗する。部分的には古くからある定跡だ。そうだ中原誠十六世名人ー谷川浩司十七世名人の名人戦で似たような手順があったなと調べてみると、なんと40年前(1985年第43期名人戦第5局)だった。

 永瀬が4筋に飛車を回って、戦端が開かれたところで封じ手に。

泉佐野市が特注した両対局者の等身大パネル

「セリフも多いうえ、わざと噛んで読まなくてはいけないので…」

 2日目、私は朝9時前のフライトで羽田空港から関西空港に向かった。機内ではネットが使えないので、着陸してすぐに携帯中継を見ると、「えっ、千日手?」「えっ、永瀬が打開した!?」。いったい何が起きたんだ、と思わず声を上げそうになる。会場のホテルは、空港から直結だ。

 控室では、立会人の福崎文吾九段、副立会人の豊島将之九段(朝日新聞)と稲葉陽八段(毎日新聞)、毎日新聞の観戦記担当の藤原直哉七段ら関係者にあいさつした。

 豊島には、ネットで話題になった佐藤紳哉七段と出演した日清のどん兵衛CMについて聞く。