「私はすぐに収録を終えて先に帰ったのですが、佐藤さんはセリフも多いうえ、わざと噛んで読まなくてはいけないので、とても大変だったそうです。撮影が一日がかりだったとか……。
それにしても、もう(NHK杯の豊島―佐藤戦は)13年前なんですね」
私が豊島とC級1組順位戦で対戦したのは、東日本大震災の日で14年前だ。時が経つのは早い。
現地解説会にも力が入る泉佐野市
現地解説会は朝10時に始まっている。会場をのぞくと定員500名で朝から満員だった。解説の大橋貴洸七段、出口若武六段、聞き手の加藤桃子女流四段と意見を交わす。中央を押さえた藤井が指しやすそうで皆の意見は一致した。そして永瀬がなぜ千日手を打開したかという話題になり、皆で推理し合う。
西川和宏六段と和田あき女流二段も控室に。サテライト会場の解説と聞き手だという。せっかくなので2人に同行し、車でサテライト会場になっている「エブノ泉の森ホール」に。空港から本州までの橋だけで3750メートルもあり、20分ほどかかるという。車中で泉佐野市の職員に色々と話をうかがった。
今回の泉佐野市の力の入れ方はすごく、名人戦の宣伝のために、両対局者の等身大のパネルを7セット!も作ったそうだ。ホテルだけでなく、関西空港駅などあちこちに設置して名人戦をアピールしている。「パネルはこの後、第4局の(大分県)宇佐市に貸し出すんですよ」とのこと。
西川和宏六段による永瀬との「千日手」エピソード
午後1時に解説会が始まる。会場は大きくて素晴らしいホールで、巨大スクリーンに盤面と対局者の様子も映し出していて、とても見やすい。泉佐野市民はなんと無料だという。泉佐野市がどれだけ力を入れているかわかるだろう。
西川の解説はゆっくり丁寧でわかりやすい。そして、永瀬とのエピソードを披露してくれた。
「永瀬さんとは10年以上前に順位戦で対戦しまして(2014年C級2組)、2回続けて千日手になりました。2度目の指し直しが午前0時過ぎに始まったんですが、開始のときの挨拶が朝10時とまったく変わらないんです。終わったのは午前4時40分で、私が負けたんですが。感想戦でも永瀬さんは元気で、5時半までやったんです。永瀬さんの体力はすごいです」
豊島の兄弟子、矢倉規広七段も会場に現れた。泉佐野市出身かつ在住で、会場までは自転車で来たそうだ。この後、矢倉は現地控室にも顔を出し、両方の解説会場でもゲスト解説をした。
観覧していたお客さんによると、「名字は『矢倉』ですが、振り飛車党なので矢倉はわかりません」と笑いをとっていたそうで、名字だけでウケるのはずるいなあ。




