まっすぐ進む道と、左に曲がる道と。多摩川の河川敷か、それとも競馬場かの運命の分かれ道。今回の目的は競馬場だから、もちろん迷わず左に曲がる。

 

 まあそんなことを言ってもどちらも同じような遊歩道だから、カーブしているということをおいては何か違いがあるわけでもない。

 子ども連れのお母さんが自転車に乗ってすれ違ったり、お年寄りが杖をつきながら散歩をしていたり。廃線跡だとかなんだとかいう以前に、地元の人の生活道路のような位置づけになっているのだろう。自転車は通るけどクルマは絶対入ってこないから、子どもたちだけでも安心ですしね。

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「この場所がかつての東京競馬場前駅だったということは、すぐにわかる」

 そうこうしているうちに、目の前には立派な木々が茂る並木道のような一角が見えてきた。並木道の先を見ると、貨物列車が通り過ぎている。

 そしてその奥には東京競馬場のスタンドが……と言いたいところだが、手前に建物ができていまでは見通すことは難しい。それでも、ちょうど武蔵野線・南武線の線路とぶつかるこの場所がかつての東京競馬場前駅だったということは、すぐにわかる。

 東京競馬場前駅からは、トンネルで南武線の線路を潜って東側に出て、そのまままっすぐ行けば競馬場、という按配だったという。

 

 さすがに50年以上の前のものかどうかはわからないが、同じ場所にいまも線路を潜るトンネルは現役だ。潜った先の路地を抜けると、北府中駅前と同じ府中街道。「競馬場前」といいう名前のバス停もあった。

 ここから競馬場まではまだ少し距離があって、少し北側の競馬場正門入口という交差点を右に折れて少し歩かねばならない。だから競馬場前というバス停の名はちょっぴり偽りがある。

 それでもこの名を与えられたのは、かつて東京競馬場前駅から競馬場まで続く道の途中にあったから、なのだろうか。いまでは府中本町駅から競馬場まで直結する陸橋が、府中街道を跨いで架けられている。