東京駅や皇居前広場付近を散策していたら、突然馬車の列がやってきた、などという経験をした人はいないだろうか。この馬車の列、世界各国から日本に赴任した大使たちが天皇陛下に信任状を届ける信任状捧呈式の車列。皇宮警察シリーズ#3で取り上げた「側車」も登場する自動車による車列も選ぶことができるが、馬車を使うこともできる。決めるのは大使自身だそうで、ほとんどの大使が馬車を選ぶのだとか。
そして自動車の車列を皇宮護衛官が側車に乗って護衛しているのと同じように馬車列も皇宮護衛官が直近で守る。もちろん側車ではなく“馬”に乗って。まさに皇宮警察ならではの仕事だが、いったいこの騎馬隊はどのように作られているのだろうか。今回取材に応じてくれたのは、護衛部護衛第一課で護衛馬担当の技官を務める佐藤充さんだ。(「皇宮警察」全4回の4回目/#1、#2、#3公開中)
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乗馬経験の少ない皇宮護衛官を指導
――佐藤さんは技官ということは、皇宮護衛官とは違うわけですよね。
佐藤さん はい。じつは本番の信任状捧呈式でも私は馬に乗ることはなくて、少し後ろから車に乗って見守っているだけです(笑)。普段は馬の調教と実際に騎乗する皇宮護衛官の訓練の指導をしています。
――本番でも騎乗する皇宮護衛官たちは、もともと乗馬経験がある人が多いのでしょうか。
佐藤さん 経験者はごく一部ですね。ほとんどは普通に皇宮護衛官をやってきた人です。本番の儀式で騎乗するのは護衛第一課の人がメインなので、護衛第一課に異動してきてから乗り始めるケースが多いです。だからもちろんすぐに本番で乗れるわけではありません。好きで乗っているわけではなくて、みんな仕事として割り切っている部分もあるでしょう。だからモチベーションの持っていきかたが難しいところもあるんです。