“警察”ではありながら、普通にイメージされる“警察”とは少し違う特徴を持つ「皇宮警察」。その知られざる任務の裏側に迫るシリーズ。今回はまさに“皇宮警察ならでは”といえる仕事を取り上げる。それは、「車列の護衛」だ。

 天皇皇后両陛下や国賓が車列を組んで移動するときに、その周囲を固めるように直近で護衛する。それは皇宮警察にとってとりわけ重要な仕事のひとつだ。そしてこうした車列はときに儀式的な要素も併せ持つ。一糸の乱れもなく美しく、どことなく威厳も漂わせるまさしく“国家的行事”。そうした車列の中心近くを固めているのが皇宮護衛官なのだ。中でも、日本国内の警察を見渡しても皇宮警察だけにしかない“黒塗りの側車”の運転を担う皇宮護衛官にスポットを当てよう。取材に応じてくれたのは、皇宮警部補の齋藤政之さん。護衛部護衛第一課に所属して、普段から白バイや側車での護衛に従事しているプロフェッショナルだ。(「皇宮警察」全4回の3回目/#1#2#4公開中)

護衛部護衛第一課、皇宮警部補の齋藤政之さん

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漆黒に輝く“サイドカー”の出番はいつ?

――そもそも、側車とはどのようなものなのでしょうか。

齋藤さん 基本的には普通のバイクで、横にサイドカー、我々は船と呼んでいるのですが、それがついているものです。護衛に当たる際には、私たち機動護衛担当が運転を担当して護衛専門の皇宮護衛官が船に乗ります。通常は、ご対象の車の後方に2台、若しくは4台で囲むような形で護衛に当たります。その際、外側にサイドカーがあるような形で走行します。

――実際に側車を見せていただくと、まさにピカピカで漆黒の輝き。厳かな雰囲気がこの車両からも漂ってきます。やはり儀式的な要素が強い使われ方をするのでしょうか。

齋藤さん そのとおりです。側車は重要な皇室儀式や国賓行事、各国大使の信任状捧呈式、ご成婚やご即位に伴うパレードなどで使用します。そうでない普段のご移動などでは白バイでの護衛が一般的です。

ピカピカに見事に磨きこまれた皇宮警察の側車