「側車の運転は白バイに乗り始めてから最低4年かかります」
――ただそうした側車の運転となると、かなり技術が求められるのではないかと思います。皇宮護衛官であれば誰でも、というわけではもちろんないんですよね。
齋藤さん とうぜんです。白バイでの護衛だって誰でもできるわけではなくて、何年も経験を重ねてようやく、というところです。実際に本番で護衛を担当するのは我々護衛第一課なのですが、そこに配属される前から時間を見つけては白バイの訓練をしているような若手がたくさんいます。訓練の中で技術を高め、経験を重ねて、さらに部内の検定にも合格しなければ護衛に従事することはできません。そのため側車に乗れるようになるまでとなると、白バイに乗り始めてから最低でも4年はかかります。なかなか試験に合格できなかったり、途中で断念してしまう人もいますね。まあ、運転するだけなら大型二輪の免許があればできるんですが(笑)。
バックが可能、サイドカーには装備を積める
――まさしく“狭き門”なんですね。普通の白バイと側車、運転上の違いはどのようなものがありますか。
齋藤さん 警備上の問題もあるのですべてはお話しできないのですが、大きな違いを上げるとすれば安定性でしょうか。側車は白バイと違って三輪なので安定感はあります。何かあって乗っている人が降りるとなると、白バイではサイドスタンドを立てなければ転倒してしまうじゃないですか。でも側車は普通にそのまま停まれる。あとはバックができたり、サイドカーに装備を積むことができたり、機能面でも優れているんです。
――安定感があるとなると、実は白バイより運転は簡単?
齋藤さん いや、車両感覚がなかなか身につかず、難しいと思います。普通の四輪自動車より少し狭いくらいの車幅になるので、それを掴むまでがまず大変。あとはハンドルの位置ですね。車列の外側にサイドカーが来るようになっているので、四輪自動車の感覚であれば、車列右側なら左ハンドル、左側なら右ハンドルみたいになるんです。右ハンドルなら普通の車を運転している感覚に近いのですが……。
――左ハンドルだと外車の運転みたいになるんですね。それは経験がないと難しいでしょう。
齋藤さん そうなんです。ただでさえハンドル位置に慣れていないのにサイドカーがついていて車両感覚が掴みづらい。思ったより縁石が近く感じたり、対向車がすごく近くに感じたり。普通の車みたいに上が覆われていないですから、実際に道路で走ってみると感覚がまったく違ってくるんですよ。