「白バイよりも側車のほうが歴史が古いんです」
――車体が大きいから内側の小さいカーブは大変そうですね。
齋藤さん いや、逆なんです。急回転は問題なくできるので内側のカーブはそれほど難しくありません。逆に外側だと遠心力が働いて、サイドカーが浮いてしまうことがあるんです。もちろん訓練を積んでいるので護衛中にそのようなことはありませんが、何も考えずにスピードを出してカーブすると外側にある船がふわっと浮いてしまう。そこはスピードの出し方やカーブの仕方で変わってくるのですが、やはり訓練をしないとその感覚は身につきません。
――なるほど……。普通のバイクの感覚だと遠心力にまでは気が向かないかもしれませんね。それにしても白バイもそうですが車体が大きいと扱いも大変そうですね。
齋藤さん 大きいバイクの方が繊細な扱いが求められますからね。より丁寧な操作が必要になります。ただそこもやっぱり訓練。これは白バイでも側車でも同じですが、制服を着てバイクに跨るということは、一般のドライバーの見本となるような運転をしないといけません。それに、皇宮警察の歴史を見ても、白バイよりも側車のほうが古いんです。それだけ陛下の車列において側車は特別な存在なんだと思います。そこで、しっかりと護衛しつつ儀式の雰囲気も損なわず、威風堂々と姿勢も服装もきっちりと。そこはずっと心がけていきたいところです。
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天皇陛下の車列はもちろんのこと、国賓の宮中参内などはテレビでもしばしば報じられる。そしてその中には中央の車両を守るように固める側車の姿も映っているはずだ。正門儀仗などでも身につける“儀礼服”と呼ばれる特別な制服に身を包み、ピカピカに磨き上げた側車で堂々たる走りを見せる齋藤さんたち皇宮護衛官。車列から放たれる厳かな雰囲気は、彼らの走りあってのものなのかもしれない。今度から、側車の走りにも注目してみてはいかがだろうか。
写真=佐貫直哉/文藝春秋
#4 東京のど真ん中 皇居でサラブレッドを乗りこなす騎馬集団? へ続く
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