「あれ何だ?」「変わったバイクだね」という声が聞こえることも
――国賓、といいますと例えばアメリカのトランプ大統領とか?
齋藤さん 外国の要人が来日した際に、国賓として接遇するかどうかは政府が決めます。なので、アメリカの大統領なら必ず国賓というわけではないんですね。そして国賓として接遇することが決まれば、皇居で歓迎行事や両陛下との御会見、宮中晩餐会が行われるので、宿泊先と皇居を往復する車列の護衛を我々が担当することになります。国賓と言っても、例えば首相との会談だったり地方視察だったりでは皇宮警察が関わることは基本的にありません。国賓の皇居参内で我々に出番がある、ということですね。
――なるほど。確かにそうした国賓が皇居を訪れる車列は多分に儀式的な要素がありますよね。そこで側車がビシッと両脇を固めて護衛する、と。
齋藤さん もちろん最大の任務は護衛です。白バイでの護衛の場合は自分で運転しながら緊急対応にも備えているのですが、側車の場合は護衛担当がサイドカーに乗っているので自分は警戒しながらも運転に集中できる。そうした違いはありますが、それでも何かあったらそれに応じた運転操作も求められますし、緊張感はあります。そしてその上で儀式の雰囲気を壊さないような走行をするというのも当然大きな目的任務になってくると思っています。
――一糸乱れぬ……というような?
齋藤さん 護衛の際に側車が並列で走るのですが、その走行位置がズレたりしてはダメですね。また例えば天皇皇后両陛下が沿道を訪れた方々にお手振りをされることがあります。その場合、我々の存在がジャマになってもいけません。いちばん重要なのは、ご対象があっての我々であるということ。なので、私たちは目立ってはいけないんです。黒子に徹する。それが車列での護衛の基本です。
――確かに「きちっと運転するぞ」という気配が沿道に伝わってきてはなにかちょっと違うのかもしれませんね。見ている人がそちらに気を取られないように、と。
齋藤さん もちろん珍しい車両ですから、護衛に従事している「あれ何だ?」「変わったバイクだね」みたいな会話が聞こえてくることもありますし、見られている部分もあるとは思います。でも、主役は決して我々ではありません。