――お2人とも、ファンの方から顔の見える経営者です。ファンとの距離が近い分、応援の声も厳しい意見も、全部お2人に直接向かってくる。それって結構しんどい部分がありませんか?
HIRO それは本当にそう! 間違いないです(笑)。
棚橋 僕も身に染みています。「HOUSE OF TORTURE」というヒールユニットがリング上で暴れ回って不透明な決着が続いてしまった時期があって、ファンから「もう見たくない」という批判が僕のところに直接山ほど来ました。
――そういう時はどうするんですか?
棚橋 でも、矢面に立つのは社長の役目ですから。会社に来る批判を全部受け止めて、所属選手を守る覚悟は決めています。
それに批判される以上に、一番怖いのはリアクションがないことなんですよ。いろいろ意見を言ってくれるファンは、試合内容が面白くなればまた応援してくれる。だから応援も批判もありがたく受け止めます。
HIRO 僕もファンの方々からの声はかなり参考にしています。少数の意見であっても、そこにヒントがある気がして。
――SNSでは「新曲がよくない!」「売り出し方がよくない!」なんて辛辣な意見が飛び交うこともありますよね。
HIRO 実は批判的な意見でも、内心「俺だってそう思ってるよ!」と同調したくなるようなコメントも結構あるんです。でも組織で動いているから、僕の思いだけではどうにもならなかったり、色んな事情でできないこともある。でもそれはファンの方たちからは見えない部分ですから、いろんな意見が出るのは当然ですよね。
「HIROさんは絶対にXを見ている」という“都市伝説”は…
――ちなみにエゴサーチはされますか?
棚橋 僕はX(旧Twitter)をよく使います。「棚橋」で検索すると「棚橋太った」ばっかり出てきますが。
HIRO わかるな〜! 僕もたまにメディアに出ると「太った」って書かれるから嫌なんですよね。パフォーマーを辞めてから10年以上経ってるんだから、そりゃ太るでしょって(笑)。
棚橋 「動きが遅くなったね」とか「キレが悪くなった」とか書かれちゃうんですよね。
HIRO 昔のままのイメージを持たれてるんですよね。だから今日も写真撮影があるので鍼に行ってきましたよ(笑)。
棚橋 でもファンの方の率直な意見を聞けるのは、やっぱりありがたいことですよね。新日本プロレスでも大会ごとに専用のハッシュタグを作っていて、そこでファンの方が感想を投稿してくれるので、どの試合が面白かったとか、どの選手が支持されているのかとか、必ずチェックしています。
――LDHのファンの間では、ファンの要望がよく実現されることから「HIROさんは絶対にXを見ている」という“都市伝説”がありますがどうなんでしょう?
HIRO 僕はSNSをやってないんですが、どんな声が上がっているかの報告は入ってきますし、参考にすることもあります。「HiGH & LOW」のキャストやストーリー展開で大きなサプライズを仕掛けた時に、ファンの方の考察や分析が当たっていることもあって、僕とファンのみなさんの頭の中がつながっているんじゃないかって思うこともあります。
棚橋 それって、HIROさんがやろうとしたことをファンがしっかり理解してくれているということでもありますよね。僕もファンの方々に狙いをわかってもらえるとうれしいんですよ。
HIRO これがプロデュース業の醍醐味かもしれないですね。いいリアクションがあると「伝わったな〜!」って。
――ファンからの声もそうですが、社会全体からの視線も意識しなければならない時代ですよね。特にここ数年、エンターテインメント業界全体でガバナンスや社会的責任への要求はより厳しくなっています。
HIRO 文春さんにお世話になってしまうような事案ですよね。
棚橋 (笑)。でも今はすごく重要ですからね。新日本でもコンプライアンス研修を社員向け、プロレスラー向けと分けて、しっかりやっています。
HIRO LDHもタレントの数が増えているので、何か問題が起きたときの対応手順は整備しています。コンプライアンス研修はもちろん、パワハラやセクハラなどの社内通報制度も見直しました。単なる芸能プロダクションではなく、しっかりとしたエンターテインメント企業を目指しているので、ここは徹底して取り組みたいです。

