いま、激しくも静かな戦いが繰り広げられている。第一線で活躍するタレントたちがBSで番組を持ちたいと争奪戦が行われているのだ。『アメトーーク!』(テレビ朝日系)でも既に番組を持った芸人たちが集まった企画が放送された。その名も「BS大戦争芸人」だ。
昨今、BSファンを公言している芸人は少なくない。隙なく作り込まれた地上波の番組に疲れた人たちにとって、心地よいのだろう。そうした芸人たちが自分の番組を持ちたいと思うのは自然なことだ。この回に集まった日村勇紀、ケンドーコバヤシ、博多華丸・大吉、飯尾和樹、塚地武雅だけでなく、おぎやはぎ、玉袋筋太郎、伊達みきお、有吉弘行といった錚々たる芸人が冠番組を持っている。BSしか見ないと公言している春日俊彰も4月から念願のレギュラー番組を開始した。その多くが、プライベートでやっている趣味をそのまま番組化したようなもの。だからBSは「おじさんのYouTube」と呼ばれていると塚地は言う。それに対しゲストの後藤輝基が「だったらYouTubeでやれよ!」ともっともなツッコミを入れるが、「やり方がわからない」と華丸は笑う。それ以上に彼らは、「テレビ番組」である、ということに価値を見出しているのではないか。また、最近はTVerがあることで、BSの番組も地上波の番組とフラットに並び、容易に見ることができるようになったことも大きいに違いない。
ちょうどこの週、新たなBS番組が始まった。『鈴木もぐらの雀荘放浪記』だ。空気階段・もぐらは地方で仕事があると、空き時間によく雀荘に行っているという。他の番組同様、それをそのまま番組にしたのだ。企画・プロデュースは、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)などの藤井健太郎だが、そこでされるような“仕掛け”はない(たぶん)。「声を張らない」「無理にボケたり、面白いことを言おうとしない」「バックショット多め」といった『アメトーーク!』で語られたBS番組あるあるそのものだ。
山形を訪れたもぐらはまず現地の人に話を聞きながら雀荘を探すが、なかなか見つからない。やっと見つけた雀荘も営業時間前だったり定休日だったり。先に食事をしようと1時間かけて有名店に向かうもそこも定休日。昔、そこにあったという場所にも雀荘はなく、一向に麻雀が始まらない。ようやく確度の高い情報を得て向かった先には「売地」の看板。今度もダメかと思った視線の先に1軒の民家。そこにまさかの「麻雀クラブ 憩」の表札があるのだ。「マジで友達ん家」のような雀荘という、ある意味奇跡的なめぐり合わせ。もぐらが醸し出す哀愁と可笑しみが、BSのユルい特性と見事に合致し、おじさんのロードムービーのような味わいだった。
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『鈴木もぐらの雀荘放浪記』
BS-TBS 火 23:00~
https://bs.tbs.co.jp/entertainment/jansouhourouki/



