“芸人の妻”としての苦労は「ぜんぜんなかった」

――芸人の妻も「すべき」が多い肩書きのイメージがありますが、満里奈さんはいかがでしたか。

渡辺 私はあまりそんなことは思っていなくて。夫もものすごく気を遣ってくれて、突然人を家に連れて来るとか、そういうこともないですし。ほとんど飲みにもいかないんですよ、インドア派なので。「芸人さんの奥さん大変ですよね」的な昭和の感じはぜんぜんなかったです。

――ご結婚されてすぐのインタビューだったと思うんですが、「夫婦2人の時は、お互い特に喋らないまま本を読んでいて、どっちかがお茶入れて『ありがとう』……みたいな空気なんです」というようなことを満里奈さんが話しているのを読んだんです。テレビでの名倉さんはバンバン仕切るみたいなイメージだったので、満里奈さんと一緒にいるとそういう空気で過ごせるんだなって思いました。

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渡辺 夫は本当にインドア派なので、その辺はちょっと似ているかなって思います。お互い時間あると「じゃあなんかネットフリックスでドラマでも見るか」って感じかな。1日で『地面師』を一気見したりだとか。 

©佐藤亘/文藝春秋

――夫婦の関係を円滑にするのは、やっぱりコミュニケーションでしょうか? 

渡辺 コミュニケーションは大切だと思います。でも、私は結婚した当初はケンカをすると黙ってしまうタイプでした。

 そうしたら夫が「黙ってしまったら何もわからない。何考えているかわからないから、言葉にしていこうよ」って。それで納得するまでちゃんと話をして次の日まで持ち越すのをやめようって言われたんですね。どんなに遅くなってもお互いの気持ちを伝え合って、「おやすみ」って言って寝ようと。

今年5月5日に結婚20周年を迎えた(渡辺満里奈さんのインスタグラムより)

――次の日に持ち越さない。 

渡辺 黙っていればなんとなくうやむやになって、そのうち普通に過ごせるようになるかなと思っていたんです。相手への不満を言葉にするのがすごく苦手だったんですけど、話すようになりました。

 嫌なことがあったら「そういうのが嫌だ」って言う。相手を傷つけない言い方を考えたりすることが、最初は「難しいなぁ、面倒だなぁ」と感じていたんですが、ちょっとずつ、訓練する気持ちで。そしたら今や夫に「あの時のあれだけどさ」とか言うと「……もう言ってくれるな」みたいな感じになりました(笑)。 

©佐藤亘/文藝春秋

――その都度その都度解決するというのは、トリオという難しい構成のリーダーである名倉さんならでは、という感じがします。やっぱり結婚って、全然ゴールじゃないですね(笑)。 

渡辺 そうそう。全然ゴールじゃないですよ(笑)! それまで何十年も別々の生活をしているふたりが一緒になるって。今でも、何のために一緒になるんだろうって疑問に思うときもいっぱいある。「なんで苗字変えなきゃいけないんだろう」って思う人がたくさんいるのも分かります。本当にスタートなんですよね。