モテてきたし、顔もスタイルも悪くない

植草 まるで子どものお世話をしているみたいですね。

風香 いいママになれるよというのも同時にアピールしようという作戦です。

植草 ………。

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風香 それだと家庭的すぎてもの足りないこともわかってます。だから私、必ず彼より早く起きてメイクにも手を抜かなかったし、ルームウェアもかわいいやつを着るようにしてました。生活感が出ないようにスタイル維持にも気を使っていたし。一緒に暮らしていても「女」を忘れちゃダメですよね。

植草 そうやって結婚に向けて努力されていたのですね。

風香 自分で言うのもアレなんですけど私、モテてきたほうだし、顔もスタイルも悪くないし、彼の生活スタイルを尊重していたし、際立ってダメな部分って正直なかったと思うんです。なのに、なんで彼は結婚に前向きになってくれなかったのか意味がわからなくて……。

 風香は別れた恋人との生活を思い出し、ため息をつく。

植草 いまの話を聞いて風香さんの結婚に対する考え方がちょっとだけ見えてきました。

風香 えっ、本当ですか?

風香さんの打算に気づいてないと思いますか?

植草 お話を聞くかぎり、風香さんと彼の関係って恋人というより家政婦さんみたい。素敵な女性というより「都合のいい女性」になってしまっています。いまどきの男性はそんな妻を求めていませんよ。

風香 え! 私はただ相手が喜んでくれたら、幸せな気持ちになってくれたら、うれしいなって思ってやっていただけなんですけど。

植草 風香さんがやったことって、相手のためのように見えて相手のためじゃないのよ。結局、全部、自分のためなんです。

風香 どういうことですか? 私、彼のために朝早く起きてお弁当までつくっていたんです! 献立だって工夫して、彼の健康も考えてオーガニックな食材を使ったり。自慢じゃないですけど、男友だちにだって結構ほめられるんです。いいお嫁さんになるねって。

植草 そうやって身の回りの世話をかいがいしくするのも、おしゃれでおいしいご飯をつくるのも、全部「結婚したいと思われる私」のためでしょう? 風香さんは相手が好きなんじゃなくて、そういう自分が好きなだけなのよ。それって本当に彼のためと言えるのかしら。3年も一緒にいて、彼がそんな風香さんの打算に気づいていないと思いますか?

 植草の指摘に、風香は黙り込む。

植草 ひょっとして風香さん、記念日に2人の思い出の詰まった手づくりアルバムをつくったり、サプライズで盛大に誕生日を祝ったりはしていない?