生まれた変化
「夫が出ていって初めて、『どうして私はいつも怒ってばかりなんだろう』『誰のために、何のためにそんなに完璧を求めていたんだろう』と、自分という人間を見つめ直すようになり、次第に私は、『子育ては性格に合わせることが大事だった』という答えに辿り着きました」
佐伯さんは、「親としてこうあるべき」「子どもはこう育てるべき」と頭ごなしに決めつけていた。しかし子どもにもそれぞれ性格があり、得意・不得意がある。それに合わせた接し方をしなければうまくいくはずがない。「私はそれに、子育て15年目にしてようやく気づきました」と話す。
そのことに気づいてからは、夫に対して、「どうして○○してくれないの?」と文句を言うのではなく、「○○してくれると助かるなあ。お願いできる?」と、“お願い”することにした。
「別居して、ある程度距離を持てたことも大きいと思いますが、ほんの少し言い方を変えるだけで、相手の反応がまったく違うことに驚きました」
子どもたちにも、「勉強しなさい!」「早くしなさい!」と上から押し付けるのではなく、「今なら一緒にちょっとやれるけど、どう?」と声をかけるように。
「私はずっと、『家庭を守る妻』であり『子どものために頑張る母親』でいようと努力してきました。手作りの食事に気を配り、学校や習い事の送迎、週末は家族でキャンプやお出かけ。それが愛情の証であり、私の『役割』だと信じていたのです。夫が家事をしないことにイライラし、子どもが片付けないと怒り、それが『当然』だと思っていました。でも今思えば、私は夫や子どもたちをちゃんと見ていなかったのかもしれません。夫が家を出て行った当初、私は『不倫なんて最低!』と怒りに任せて責めるばかりで、『私だって頑張ってるのに、なんで?』と、夫の気持ちに思いを馳せる余裕なんてありませんでした……」
それが変化したきっかけの一つに、看護師の管理職研修があった。