この数年で食品の表示ルールに大きな変更が行われた。たとえば、加工食品の原材料は、原産地ではなく製造地が表示されることになった。つまり、消費者には原産地の把握が不可能なのだ。なぜこれまで得られていた情報が得られなくなってしまったのか。
元農水大臣の山田正彦氏の著書『歪められる食の安全』(角川新書)の一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)
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製造した場所を記すことの意味とは?
加工食品とは、「中間加工原料」を原料とする食品だ。スーパーのお惣菜のようなイメージを持つ方がいるかもしれない。たしかに惣菜もそのひとつだが、その言葉の範囲はもっとずっと広い。例えば、サラダ油、酢、醤油、パン、そば、うどん、ソーセージ、ヨーグルト、チーズ、トマトケチャップ、スナック菓子、チョコレート、ジュースなどもそうだ。
こうした広範囲の食品についての表示もまた、一省庁によって変更されてしまった。
加工食品の原料である中間加工原料については、「製造地」の表示が認められ、原産地は表示しなくてもよくなった。結果が「小麦粉(国内製造)」という表示だ。
消費者が知りたいのは、中間加工原料が加工された場所なのだろうか。私は小麦が製粉された場所ではなく、小麦の産地を知りたいと思う。
かつ、この表示では、小麦を「国産」だと誤解してしまう人もいるだろう。消費者庁は表示ルール変更のたびに「優良誤認を防ぐため」と説明しているが、これこそ、懸念している優良誤認そのものではないだろうか。
24年5月28日、食品表示問題ネットワークが主催する「輸入原料で『国内製造』って何? 正しい食品表示を求める市民の集い」が衆議院議員会館で行われた。一般の市民や記者、国会議員、生産者などで会場は満席となった。北海道からわざわざ駆けつけてくれた生産者もいた。またオンラインでの参加も100名を超えた。
会の冒頭、指名を受けて私も簡単に挨拶したが、話をしながら参加者で席がうまったことに胸が熱くなった。
問題点を説明してくれたのは、食品表示問題ネットワークの原英二さんだ。原さんは20分ほどのプレゼンテーションの中で表示の問題点を端的に伝え、また独自に行った街頭調査の結果を紹介した。

