この院内集会には消費者庁食品表示課の山口昌彦課長補佐、食品表示課食品衛生係の野中紀鷹氏が参加していた。製造地を表示させる理由について山口氏の説明を私なりに整理すれば三つあると思う。

 一つめは、メーカーが扱う原料の輸入先がさまざまな事情で変わるというものだ。山口氏は「実行可能性」という言葉を用いてこんなふうに説明していた。

「例えば小麦粉でいえば、大手メーカーが扱う小麦粉は、例えば同じアメリカ産であっても季節などによってグルテンの質などに差が生じます。一定の品質を保つためには多くの産地のものを混ぜ合わせる必要があるといった事情がある。その度に小麦粉の産地の組み合わせが変わるわけです。そのせいで重量順の産地の順番も変わる。こういった状況を検討会の中でも実行可能性について検討し、加工食品の場合は製造地の表示を原則として規定しております」

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 二つめは、そのたびにパッケージを変更するのはメーカー側にとって負担が大きいという理由だ。

「事業者は包材を準備するが、その包材もコストを抑えるために何万食分といった非常に大きな単位で用意することがある。産地が切り替わる度にそうした準備をする、包材を変えていくというのは事業者さんにとっても負担が大きい」(山口氏)

 三つめは、検討会で国内製造を認めるという結論が導かれている以上、消費者庁はその啓発に努めることを優先したいという理由だ。

「(街頭調査で)3分の1の方の誤解を解いていくためには、やはり私どもとしても引き続き、普及啓発に努めていくしかないと考えている」(山口氏)

 この三つの理由が、一次原料ではなく、製造地を表示するのに納得できるものであるかを考えてみたい。

時期によって輸入先が変わるから……?

 まず一つめ、原材料の輸入先が変わるので生産者側の負担が大きいというが、本当だろうか。原さんはその欺瞞性について喝破した。

「小麦についていえばそうではありません。小麦というのは国が輸入して製粉会社に割り当てており、どこの小麦かわからなくなってしまうなどということはないんです。輸入先がコロコロ変わるというのも、つじつまがあわないでしょう。製粉会社が原産地を指定して決めればいいだけのことです。もし変わる場合でも、消費者庁が変わる可能性のあるところを2か国とか3か国と書くように定めるなど、柔軟に運用すればいいだけの話ではないでしょうか」