そして仮に啓発によって「国内製造は国産ではない」という認識が消費者に行き渡ったとしても、解決にはつながらない。今の表示ルールでは、原料原産地がわからないという問題は残されたままなのだから。
おかしなことに、消費者庁のこうしたスタンスは一貫していない。以下の図に示した22の品目については、今でも製造地表示が認められず、原産地を書く必要がある(図3)。
例えば22品目の一つ「もち」は、原材料とその産地を書かなくてはならない。
メーカー側の本音
集会のプレゼンテーションでは原さんはこんな話を打ち明けた。
「製造地表示について消費者庁はいろいろな理由を言うけれど、だいたい言い訳です。私はある事業者に本音を聞いたところ、『輸入と書くことで売り上げが減るのが心配』と言っていました。大部分のメーカーは表示できないのではなく、表示していないのではないでしょうか」
この話に私も大きくうなずいてしまった。2016年3月に消費者庁が発表した「消費者に対する調査について」では、「食品表示を参考にする」と答えた人が、92.6%おり、その理由として「原料が国産のものを選びたい」と答えた割合が65.4%もあった。
私自身もその一人だ。食料自給率を上げたい、農家さんを応援したい、後述するような理由でアメリカ産の小麦はとりたくないなどがその理由だ。
私の個人的な話はおいておくとしても、現状の表示は、消費者の選ぶ権利、知る権利を侵害するとともに、国内のまじめな農家さんたちへの不当な妨害行為ではないかと思っている。
九州でお会いしたある生産者さんからこんな話を聞いた。その方が作っている商品には「小麦粉(国産(北海道産))」と記していた。あるとき消費者庁から直接連絡があり、本当に北海道産の小麦が使われているかどうかを立ち入り調査する、と言われたそうだ。
食品偽装がたびたび問題になるのでそういった抜き打ち検査は必要かもしれない。しかしその方は、「国産と書いていることへの圧力だと感じた」と言っていた。
消費者庁はこの方だけではなく、いくつものメーカーにこのような調査を行っているのではないだろうか。一体だれを向いて仕事をしているのか。本当に情けない思いだ。
図版作成=小林美和子

