ダルビッシュのスター性は“巨人好み”だったが…

 この年、ポテンシャルが一番高いと感じていたのは東北高のダルビッシュ有(日本ハム1巡目)でした。しかし、冒頭にも書いた通り「即戦力投手を自由枠で2人獲る」という方針でしたので、高校生の1位候補は追っていませんでした。今にして思えば、ダルビッシュも甲子園で活躍してスター性もあったので、巨人が好みそうな選手ではありました。ただ逆指名制度は巨人が提案してスタートしたものですので、その枠を当然使うという前提、暗黙の了解があったように感じました。逆指名、自由枠を使わなかったのは2001年に寺原を指名した時だけですから。この時は前にも触れたように青山学院大の石川雅規の自由枠がほぼ決まっていたにもかかわらず、当時の長嶋監督が甲子園を見て「日南学園の寺原にしよう!」ということで急遽方針転換したという経緯がありました。そういうイレギュラーなことがなければ、まずは逆指名で獲れる選手を狙おうというのが球団の方針でした。

東北高校時代のダルビッシュ有 ©︎文藝春秋

 東北高の若生監督には横浜時代から大変お世話になっていました。若生監督は「これはプロだな」という選手に対しては徹底して目をかける監督さんでした。ダルビッシュがいた時も何度か学校に行きましたが、股割りやストレッチはいつも丁寧にやらせていましたね。

パチンコ屋で喫煙など“素行の悪さ”は関係ない

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 当時のダルビッシュは怪我が多く、成長痛などもあってあまり厳しい練習はできなくて、試合でも思いっきり投げることは多くありませんでした。それでも力をあまり入れていないようでも大きく腕が振れて指にかかったボールが投げられるピッチャーでしたから、モノが違うなという印象がありました。東北高ではダルビッシュの2学年上にいた高井雄平(2002年ヤクルト1位)も評判でしたが、2人を比べてもダルビッシュのポテンシャルの高さは遥かに上だなと感じました。一方で、プロ入り直後にパチンコ屋でタバコを吸っているところを写真誌に撮られるなど、高校時代から素行面が悪いということも言われていました。巨人はそもそも指名する予定はありませんでしたから詳しく調査はしていなかったですが、多少素行が悪いような選手はそれまでもよくいましたので、そこまで気にはしていなかったと思います。他球団はそういうところを気にしてか、結局日本ハムしか指名しませんでした。それでも実力は1位指名重複レベルでした。

ダルビッシュ有 ©︎文藝春秋