昨今、お笑い賞レースが真っ盛りだ。この週末も大型賞レースが立て続けに放送された。まず6月28日には、『ツギクル芸人グランプリ』(フジテレビ)が。ファイナルでは史上稀な大接戦で豆鉄砲が栄冠を手にした。翌29日には、朝日放送で『ABCお笑いグランプリ』が開催。今年で46回目を迎える歴史ある大会だ。こちらは本命視されていたエバースが文句なしの強さで優勝した。こうした賞レースは、芸人たちのチャンスが増えるため歓迎すべきことだろう。だが、一方でネタが“消費”され、芸人たちが疲弊してしまうという側面もある。また、“競技化”の良し悪しも語られることが少なくない。

  そんな中、もうひとつの賞レースが、同じ日に放送されていた。「地上波の最果て」を自称するTOKYO MXで今年から始まった『MXグランプリ』だ。これは「マニアックな異端者たちの逆襲」と銘打たれた「カタヤブリな芸人の中から、“笑いの破壊力No.1”を決める賞レース」。4月から7月まで月1回予選ラウンドが開催され、それを勝ち上がった芸人が9月の決勝大会で雌雄を決するというシステム。この大会の大きな特徴は、ネタを各審査員が100点満点で採点するのに加えて、フリータイム(平場)での人間力も評価する点。そのため、ネタ後の平場の時間も長くとっている。ケンドーコバヤシが司会を務め、いまのところ毎回、ハリウッドザコシショウが審査員を務めていることからも、大会のハードコアな方向性がわかる。実際、これまでも“競技化”とは無縁のカオスっぷり。5月大会では橋山メイデンが“奇跡”を連発し、400点満点を獲得するという、他の賞レースではあり得ない展開となった。

TOKYO MX HPより

 今回もサドドド、ジャジャジャジャーン、プーケットマーケット、ユビッジャ・ポポポー、虹の黄昏というなかなか見ないメンツ。いや、まだ過去2回よりは“メジャー”といえるのが恐ろしい。特に虹の黄昏は「地下芸人の帝王」と呼ばれる存在。正直、過去2回の流れからすると、虹の黄昏は必ずウケるだろうけど、他の未知の芸人が評価されるのではないかと思っていた。実際、これまで満を持してテレビに出たときの虹の黄昏はその実力ほどハネたことはあまりなかった。

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 果たして今回、いつもどおりハイテンションなネタをやった彼らが大ウケ。ザコシショウは「(虹の黄昏は)どこのコンテストにも当てはまらない。今日このグランプリは当てはまったな」と讃えた。まさに、「MXグランプリ」はどの賞レースとも被らない。緻密さとは程遠い、ひたすらくだらないことを全力でやる賞レース。お笑いの原点なのか成れの果てか。確かなことは、その瞬間、ただただ爆笑したということだ。

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『MXグランプリ~異端芸人決定戦~』
TOKYO MX 毎月最終日曜 19:00~
https://s.mxtv.jp/variety/mxgp/