介護施設への入居

 連休明け。父親の帯状疱疹の腫れはひいたが、再び痛みが出れば叫び声を上げる父親をこのままにはしておけない。だが、いつまでも仕事を休めない。

 澤田さんは、家族介護を経験している父親の旧友に相談した。すると、「介護サービスや介護施設を利用しては?」と勧められ、目から鱗状態に。「要介護認定を受けていなくても介護施設を利用できる」と知り、驚いたのだ。

「80歳を超える父がいるにもかかわらず、その時まで私は、自分の両親にとって介護なんて無縁のことだと思い込んでいました。世間知らずでした……」

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 当時は実家から徒歩15分の場所に、ショートステイができる施設がオープンしたばかり。澤田さんはその施設に飛び込み、受付で利用システムを訊ねた後、父親の旧友からベテランケアマネジャーを紹介してもらう。ショートステイとは、基本的には要介護認定を受けている人が、介護施設に短期間入所し、日常生活の世話や介護サービスを受けること。ケアマネジャーは、介護を必要とする人が適切なサービスを利用できるように支援する専門職。介護保険における正式名称を「介護支援専門員」という。

 介護サービスを利用する流れとしては、要介護認定を受けてからサービスの利用を始めるのが一般的だが、急を要する場合は、申請した日に遡って保険料の給付を受けるということも可能。仕事に戻るために、一刻も早く父親を入所させたかった澤田さんは、まずは申請だけしておき、入所が決まってから要介護認定を受けることにした。

 要介護認定とは、介護保険を利用するための権利を獲得する手続きだ。被介護者の介護を必要とする度合いによって、要支援1~2、要介護1~5の7段階に認定される。(詳しくはP82表2-2)

 ケアマネジャーのアドバイスで、母親も一緒に要介護認定を受けると、約1ヶ月後に出た結果は、父親要介護3、母親要介護1。

 介護施設への入居を嫌がるであろう父親には、通院先の主治医から「病院のベッドに空きがないので、新設の療養施設に入りましょう」と説明してもらい、施設の車で迎えに来てもらった。その日は、救急外来を受診した日から、まだ1週間しか経っていなかった。