二度目の“激痛”に襲われ、心がプツンと折れた
横田 不安を抱えたまま再び手術をして、目が覚めたら、またあのときと同じ耐え難い激痛に襲われました。そこで、心がプツンと折れてしまって……。
手術後、主治医の先生が病室に来てくれましたが、「どうして私を死なせてくれなかったんですか! どうして私を助けたんですか!」と初めて暴言を吐いてしまいました。
先生は「ゆっくりでいいから一緒に治していきましょう。僕は命を助けることしかできないけど、慌てないでゆっくりいきましょう」と声をかけてくれましたが、パニック状態なので、先生の話を聞いても全然納得できませんでした。
その後も「死にたい! 死にたい!」と叫び続け、隣で旦那がそっと見守ってくれていました。
——そこから、どうして前を向くことができたのですか?
横田 手術が終わって病室でワアワア泣きじゃくっていると、看護師さんがおにぎりなどの軽食を届けてくれたんです。
ずっと「死にたい! 死にたい!」と叫んでいたのに、手の断端(切断した部分)を包帯でぐるぐるに巻いた状態で、ベッドのテーブルに置かれたおにぎりを食べたんです。
その姿を見て旦那が「おにぎりは食べるんだ……」とポツンと言ったとき、初めて2人で笑えました。あれだけ「死にたい!」と叫んでいるのに、おにぎりは食べるんだって。そのとき、私、生きられるかもって思ったんですよね。
「痛みに関しては脚の経験があるから、1週間後には薄れていくだろう」と想像できたし、乗り越えていこうと思えるようになりました。はじめは個室にいましたが、1人だと無音で寂しいので大部屋に移してもらうことになって。
同室には骨折したおばあちゃんたちがいて、夜中にトイレに行きたいと看護師さんを呼んだり、たまに雑談が聞こえてきたりして、他愛もないことに癒されました。
それでも、夜になると死にたくなる。だけど朝日が昇れば、「今日はちょっと頑張ってみようかな」って。その繰り返しでした。
撮影=細田忠/文藝春秋
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