※こちらは公募企画「文春野球フレッシュオールスター2025」に届いた原稿のなかから出場権を獲得したコラムです。おもしろいと思ったら文末のHITボタンを押してください。

【出場者プロフィール】パニーニ暮野 埼玉西武ライオンズ

関東地方のどこかに生息。ライオンズのキャッチャー陣を中心に推している。最近感動したことは、ネビンの契約2年延長。今年の目標は、ベルーナドームのミストの中をスーパーヒーロー風に歩くこと。

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「そういえば、クソデカネックレス買わないの?」

 野球観戦に来ていた5月のある日、一緒に来ていた友人が私に聞いた。

 知らない方のために説明をしておくと、「クソデカネックレス」とは、ライオンズが発売した応援グッズ、正式名称「ビッグチェーンネックレス」のことである。その名の通り、金色のビッグなチェーンにレオの横顔がついている。チェーン部分は全長約93cm(輪っかになった長さは約45cm)。レオの顔は高さ約18cm×幅約22cm。重量は220g。値段は税込3900円だ。

クソデカネックレスをつける西川愛也選手 (西武ライオンズ公式インスタグラムより)

 これまで私は、色々とライオンズのトンチキグッズを買ってきた。岡田雅利選手(現・育成担当)の私服姿のタオルやアクスタ、チームロンゲのロン毛付きキャップ等々。だが、今回は食指が動かない。

「興味はあるんだけど、クソデカネックレスはクソデカネックレス以外の用途がないから……」

 私がそう答えると、友人も納得したように、

「ああ~、そうだよね……」と言った。

 私がグッズを買う一つの基準として、「普段使いができるか」というものがある。応援タオルはもちろんタオルとして使えるし、ロン毛キャップは、ロン毛部分が着脱可能なため、通常のキャップとしても使える。岡田雅利アクスタも、バッグに入れて一緒にお出かけできる。

 一方、クソデカネックレスは野球観戦時につける、「ただデカい」ネックレスだ。あまりにもゴテゴテで荷物になるし、普段使いは到底できない。それに税込3900円をつぎ込むのは、かなり躊躇する。

「あれは買えないなぁ……」と、帰りの電車に揺られながら思った。一方で、レオの顔をぶら下げて、いそいそと球場グルメを買っていく人達や、レオの顔を揺らし、チェーンをジャラジャラ鳴らしながらチャンテを歌う人達の、楽しそうな顔が浮かぶ。ああ、やっぱり羨ましい。

 そしてその時、私の脳内に突如電流が走った。

「なぜ私は、『クソデカネックレスは普段使いができない』と錯覚していた?」
「クソデカネックレスを、普段使いにしてしまえば良いのではないか?」

コーディネートを“プロ”に依頼してみた

 6月中旬、クソデカネックレスが再販された。そのタイミングで運良くベルーナドームのチケットを持っており、無事に入手することができた。クソデカネックレスを母に見せると、値段(税込3900円)を聞いて「しゃ……しゃぶ葉で食べ放題ランチできるじゃん!?」と卒倒しそうになっていた。そう、この「ただデカい」ネックレスに、汗水を垂らし、ウンウンと悩み、時に頭を下げながら得た賃金を、そしてしゃぶ葉で食べ放題ランチできるほどの金額を、私は突っ込んだのである。それならば、普段から着け倒して、元を取らなければならない。食べ放題ランチのように。

 何とか着けこなす方法はないものか。そこで私はイメージコーディネーターさんにショッピング同行を依頼して、クソデカネックレスに合うコーデを選んでもらうことにした。

「このライオンズの応援グッズが、オシャレに見えるような服が欲しいんです」とお願いすると、「分かりました! 探してみましょう!」とコーディネーターさんは言ってくれた。私の奇っ怪な依頼にも快諾してくれ、「これがプロか……」と思った。

 コーディネーターさんが選んでくれたのは、カーキのベストと、茶色のジャングル柄のワイドパンツであった。

「暮野さんはイエベ春なので、カーキ色が得意です。ベストだとTシャツとも合わせやすいですよ。トップスがシンプルなので、ボトムスを柄物にすると合うと思います。もし上にユニフォームを着るとしても、ジーンズとかは定番だと思うので、柄物のパンツやスカートも良いと思いますよ!」と、観戦時の着回しのことも考えてくれていた。やはりプロだと思った。