私たちの住む街の平穏と発展を担う「市長」という要職――立派な仕事に見える一方で、見えない苦労やどこか情けない一面も。千葉県鎌ケ谷市の市長を5期務めた元政治家の清水聖士氏が「市長の一日」について綴ったコラムを、新刊『市長たじたじ日記――落下傘候補から、5期19年、市長務めました』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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市長の朝が「遅い」理由
市長の朝は早くない。
市長公用車に乗って登庁、午前9時15分に市長室に入る。
前任市長は毎日、夜の会合に出かけ、市役所への出勤は昼ごろだったという話を就任時に市役所職員から聞いた。
全職員を前にしての就任あいさつのタイミングで私は宣言した。
「私は毎日、8時半には市役所に来ます!」
市役所の開庁時間は午前8時半~午後5時15分なので、その前には席に着いているという意味だ。私にはこういう場に出るとついカッコつけてしまうところがある。
しかし、市長の仕事を始めてみると、毎日8時半に来るのはキツいことに気づいた。
市長には公的な夜の会合が多い。帰宅が深夜0時を回ることもある。決裁書類の処理のために夜遅くまで居残ることもある。そもそも私は商社と外務省という典型的な残業過多の職場にいたこともあり、夜型の体質なのだ。
就任から数週間がすぎ、8時半の登庁は厳しいと思い始めたころ、それに追い打ちをかける出来事があった。
「私はあまり朝早く市役所に行かないんだ。私が早く行くと、職員が市長より遅いのはまずいと思って無理をする。だから、職員よりちょっと遅いくらいに出勤するんだよ」
鎌ケ谷の隣、市川市の市長がそう話すのを聞いて、「なるほど」と思った。
