ひっそりと刻まれた“戦時の爪痕”

 途中、引き込み線は玉川上水を跨いでいる。その小さな橋にはレールのようなものが埋め込まれているが、これは後年設置したオブジェのようなものだろう。少なくとも戦前からあったような橋にもレールにも思えない。

 

 玉川上水を跨ぐ地点のすぐ近くには境浄水場。新武蔵境通りという大通りも並行するように通っている。

 廃線跡はその先もすっかり遊歩道として整備されているから、迷うことはなさそうだ。時折自転車に乗った地元の人が行ったり来たり。周囲は住宅地だから、生活道路としても使われているということか。

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 遊歩道そのものは、それこそ一筋の線路が通れるくらいの細い道。ただ、ところどころにパッと開けた場所があって、公園になっている。

 
 

 そのひとつに、「高射砲陣地跡」の説明書きがあった。

 なんでも、空襲に備えて敵機を撃墜するための高射砲を設置したのだとか。ただ、B-29は上空1万メートルの高さから爆弾を落とす。

 おかげで実際の空襲では高射砲からは敵機に届かず、モノの役に立たなかったという。