野球場が即解体された“切なすぎる理由”

 なんでも、関東ローム層の地質が祟ってかグラウンドは砂ぼこりでもうもうと。風が吹けばボールが見えなくなるほどだったとか。

 阪神園芸さんが土も天然芝も鮮やかに整えてくれる時代でもなく、巨大なスタンドとは裏腹にグラウンドは粗末なモノだったのである。

 

 1956年に解体された軍需工場跡地の野球場跡地は、公園や団地などに生まれ変わった。

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「緑町パークタウン」という団地の名前にはグリーンパークの名残が感じられるし、すぐ近くにはグリーンパーク商店街もある。まったくスタジアムの面影が消えたわけではない。

 
 

 また、武蔵野中央公園の中には地下通路の床板が保存されていたり、ところどころに中島飛行機時代の痕跡も残っている。中島飛行機からグリーンパークへの移り変わりがよくわかる説明書きも、しっかりと用意されている。

 そんな武蔵野中央公園。そこは戦後80年、米軍の空襲があったとはおよそ思えない、のどかな郊外らしい風景が広がっていた。

写真=鼠入昌史

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