絶対に完成させるべきルール

 日本はこのグローバル・ミニマム課税の実施をリードしており、少し専門的になるが、私が財務官のころに既に所得合算ルール(IIR)が法制化された。

敬愛する恩師、先輩が多い神田氏 Ⓒ文藝春秋

 加えて、ADB総裁に就任して間もなくの2025年3月末に公布された2025年度税制改正に係る「所得税法等の一部を改正する法律」で更に前進している。すなわち、軽課税所得ルール(UTPR)が「国際最低課税残余額に対する法人税」として、また、国内ミニマム課税(QDMTT)が「国内最低課税額に対する法人税」として、2026年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用される。

 これらが実現しないと、各国間でデジタル課税競争、二重課税、訴訟合戦が頻発するなど、悲惨なことになりかねず、絶対に完成させるべきである。

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 他方、このような状況を更に複雑化させているのが国連での議論である。2023年11月の国連総会において、「包括的・効果的な国際課税協力の促進」に関する決議案が提出された。OECDやG20で積み上げてきた「二つの柱」の議論とは別のものとして、国際租税協力の枠組条約(framework convention)に向けたこの多国間枠組の基本的事項(ToR)の原案を議論し、この原案を含む報告を2024年秋に行われる国連総会に提出する、ということが議決されてしまったのである。G7各国をはじめとする50カ国近くが、これまでの「二本の柱」の解決策などのスタンダードを損ないうるものだとして反対する中、アフリカ諸国等100カ国以上の賛成による多数決で可決された。

 だが、そうした中でも、「二本の柱」実現に向けた取り組みは着実に進められている。

※神田氏の連載「ミスター円、世界を駆ける」は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています。本記事の全文(「GAFAに“税金の網”を」、8500字)では、下記の内容をお読みいただけます。
・超富裕層への新たな課税策
・安倍総理への進言
・舛添・小池両知事からの支援

出典元

文藝春秋

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