「介入は効果がない」――。IMFの理論にどう対峙したか
■「ミスター円、世界を駈ける」
第1回 ウクライナ、ガザ……そのとき国際金融の現場で何が起きたか
第2回 戦時下のキーウ行夜行列車
第3回 今回はこちら
科学は万能ではない。人間にとって宇宙のほぼ全てに当たる96%が未解明であるが、人間が作っている市場でさえ、これをコントロールできると傲慢になればバチが当たるであろう。人間は大自然に対して謙虚であるよりほかないが、社会に対しても謙虚でないと足をすくわれる。
蓋し、マーケットは絶えず不合理であり、理不尽。しかし、マーケットはいつも正しい。今のプライスが真実だから。お天気のようなものか。余りに多くの要因に支配されるし、構造自体が変われば、過去のデータから導き出したルール通りにもいかない。気候変動で法則が崩れていると天気予報も難しくなる。外れても仕方ない、とにかく今降っている雨が、或いは、時に襲い来る大災害がリアリティであり、文句を言ってもどうにもならないのと同じだ。
恐らく、マーケットに浸かっていない、いわゆる普通の人にとって一番、違和感があるのは、ある統計の発表やイベントなどが起こったときに、マーケットが、しばしば、本来と正反対の動きをすることだろう。セル・ザ・ファクト(事実で売ること)と言われるもので、バイ・ザ・ルーモア(噂で買うこと)によって、先に思惑でポジション(持ち高)を作り(先買い)、価格もそういった期待を織り込んでしまっているので、いざ、その通りになったら、利益を確定するために、逆に売る現象だ。だが、それなら、何が起こっても、どっちにも振れうることになる。

或いは、理屈に合わない動きは、多くの場合、「ポジション調整」という言葉で片付けられるが、これも、よくわからない時の言い訳にすぎない便利な言葉である。
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source : 文藝春秋 2025年3月号