『スターフォックス64』を映画のように考えた
宮本とチームが直面していた難題は、2Dの横スクロールゲームを3D環境に変換することだった。
敵がうろつき、マリオが走り、ジャンプし、物を集めたりすることに変わりはないが、それをZ軸(奥行き)を用いた3Dにしなければならない。
「いちばん難しかったのは、バーチャルな3Dの世界をつくることでした」と宮本は言う。
「プレイヤーがフラストレーションを感じないベストな3Dアングルにするのが難しいんです。ゲームはプレイしていて楽しいものじゃなくちゃいけません」(Mielke 1998)。
この問題に対処するべく、宮本は映画に目を向けた。それまで宮本は、自分はゲーム機で映画をつくっているのではない、と力を込めて主張してきた。映画は受動的で、ゲームは能動的だと考えていたからだ。
しかし彼は、カメラアングルや進行に合わせたリアルタイムの会話など、ゲームデザイナーも映画の優れたアイデアを活用できるとも語っており(“Mr. Miyamoto on Star Fox”1997, 118)、『スターフォックス64』(任天堂1997)をインタラクティブな映画のように考えていたという。
「3Dゲームに取り組むようになってからは、カメラアングルや位置や動きを具体的に指定するようになりました」(Nintendo Power 1997)と宮本は語る。
『マリオ64』で「カメラマン・ジュゲム」を配置
そして彼は『スーパーマリオ64』において、視点の問題を見事にクリアした。
2種類のカメラを用いることにしたのだ。
ひとつは自動制御で「おすすめの視点」を提供するもの(敵やチャレンジが近づくと、ゲームが自動でこの視点に切り替える場合もある)。そしてもうひとつはプレイヤーがコントロールできる視点で、誰もが「映画監督」になれるもの。
加えて、宮本はジュゲムというキャラクターの形でゲーム内にカメラマンを配置した。
雲に乗ったジュゲムは、これまでの作品ではマリオやルイージにトゲのついたカメを投げつけてきたが、本作ではマリオについてまわり、進行を記録する(図2)。
ジュゲムが『マリオ』シリーズでカメラマンを務める期間は長くなく(本作以外では、『マリオ&ルイージRPG2』と『ペーパーマリオRPG』の2作のみ)、この配置がゲーム史に大きな影響を与えたというわけではない(たとえば『グランド・セフト・オート・サンアンドレアス』[ロックスター・ゲームス2004]では、主人公カール・ジョンソンを追いかける撮影隊は存在しない)。
