『時のオカリナ』に続く「体験型ゲーム」へのシフト

 直線的にゴールを目指すのではなく探検的な要素が入っているところに、『ゼルダ』シリーズの影響がうかがえる。

 マリオはゲーム空間内を動き回り、あちこち探検して回る必要がある。コースごとに7つのスターを集めていかねばならないが、そのためには所定のタスクを所定の順序でこなさねばならない。

 しかし、それまでの『ゼルダ』とは異なり、このマリオではさまざまな場所に戻ってただ遊ぶことができる。

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「遊び場」という宮本のゲームデザイン上の目標を、より完全に実現したのが『スーパーマリオ64』であり、プレイヤーにはジャンプしたり、二段ジャンプをしたり、走ったり、忍び寄ったり、飛んだりできる場所が提供されている。

 物語は緩やかに存在する程度であり、ここに宮本の体験型ゲームへのシフトの始まりを見ることができる。

 物語性を捨て、現実の模倣や、ゲーム体験、そして人と楽しみを共有することを追求するゲームだ。しかし、このシフトが明確になったのは、のちに発売して大きな賞賛を受ける『ゼルダの伝説 時のオカリナ』でのことだった。

次の記事に続く 「憎しみも、ひどい苛めもない」スマブラを“相撲の押し合い”と表現した任天堂・宮本茂が重視する「ゲームデザインの哲学」