半世紀前の「ニクソン・ショック」との奇妙な符合
このブレトン・ウッズ体制を破壊した1971年のニクソン・ショックあるいはスミソニアン合意の経緯を振り返ってみると、それが、2025年のトランプ・ショックあるいはマールアラーゴ合意と符合していることに気付かざるを得ない。
第一に、アメリカ国内でインフレ、貿易赤字そして財政赤字が問題視されていたという状況は、1971年と2025年とで共通している。
第二に、トランプそしてミランは、アメリカが貿易赤字(準備通貨ドルの供給)と安全保障の傘の提供という負担を背負っているのに対して、他国はその恩恵を被りつつ、競争相手としてアメリカを脅かしているのであり、不公平であるという強い不満を抱いている。
それは、ニクソンも同じであった。「新経済政策」の演説の中で、ニクソンは、こう述べている。
<今日、我々の支援を受けて、ヨーロッパとアジアは、その活力を取り戻してい る。彼らは、我々の強力な競争相手となり、我々は彼らの成功を歓迎している。しかし、今や、他の国々が経済的に強力になり、世界の自由を守る重荷を公平に負担すべき時が来ている。為替相場を正し、主要諸国が公平に競争すべき時が来ている。もはや合衆国が後ろ手を縛られたまま競争する必要はない。>
第三に、ブレトン・ウッズ体制の崩壊は、ロバート・トリフィンが「トリフィンのディレンマ」として予言した事態が顕在化したものとして理解されている。ミランは、彼の論文の中でそのトリフィンに言及しつつ、自説を正当化し、国際通貨体制の再編を訴えた。
第四に、ニクソンは一方的にドルと金への交換を停止したが、トランプも国際協調ではなく、一方的に国際通貨体制を再編しようとしている。
第五に、ニクソンは、アメリカの輸入品に対して10%の課徴金を課し、他国に対して自国通貨の切り上げを迫った。トランプも、2025年4月2日、10%の一律関税を導入したが、ミランは、関税を他国に自国通貨を切り上げさせる手段として論じていた。
