――航空会社時代に刷り込まれたことが、いまの料理のお仕事の土台になっている。

西岡 間違いなくそうですね。大学まではぽわーんと生きてきたので、訓練もすごくできなかったんですよ、私。人一倍だめで。

――だめというのは?

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西岡 たとえば、緊急時の対応の仕方をマニュアルに記載されている文言どおりに覚えるという試験があったのですが、当時の私は内容がちゃんと理解できていれば、自分のことばでアウトプットしてもよいのでは? と思っていたんです。その感覚でやっていたら、試験が全部バツになってしまって。

 ことばのアレンジは不要だということにがーんと衝撃と受けて、私はいままでそんなふうには生きてこなかったと。そこから、言われたとおりの文言で言われたとおりのことをやると自分に刷り込んで、訓練を乗り切りました。

――規則という枠のなかで仕事をされることはしんどかったですか。

西岡 そうですね。でもよく考えると、万が一の緊急時にみんなが同じ文言をいっせいにお伝えすることで、物事をスムーズに進められるというところに、ちゃんと意味があるんですよね。緊急時には、相手の言葉に違和感を覚えている余裕は1秒たりともない。そんな仕事なんだとあらためて理解しました。

 さらにそれを料理の仕事に置き換えると、料理のベースがあった上で、自分のアレンジをのせていくということなのかなと、いますごく思っています。

食事をするときが唯一ほっとできる時間だった

――航空会社でのお仕事は、どんなところが楽しかったですか?

西岡 食事って楽しいなと思わせてくれたところです。乗務中はすごく緊張して、緊急時のことも想定しつつ、自分自身の目標についても考えているので、とにかく気持ちがずーっと張り詰めていて。そのなかで、現地に到着して、食事をするときが唯一ほっとできる時間でした。

「アメリカのわんぱくな朝食。滞在先に応じて『食べたい!』と思うものが変わるから不思議です」(本人提供)

 私はフランクフルトとロサンゼルスの班になることが多くて、その土地ならではのものを食べたり、お酒も地域によってそれぞれ違って面白いなと思いながら、ちょっと眠いけどがんばって起きていて。

「シンガポールのホーカー。現地の方が注文しているものを真似して頼んでみたりしていました」(本人提供)
「ドイツ滞在の楽しみだったホワイトアスパラガス(シュパーゲル)。旬の時期はいろいろなレストランでホワイトアスパラガスを食べていました」(本人提供)

――ちなみに機上で寝ることはあるのでしょうか。

西岡 いや、ホテルですね。長距離の場合は現地で丸一日過ごして、翌日帰る。

――飛行機の中ではずっと起きてらっしゃるんですか。

西岡 でもあるんですよ、寝る場所が。秘密の階段みたいなのがあって。

――えっ。

西岡 客席の上と下にスペースがあるんですけど、扉を開けると階段があって、そこを昇ったり降りたりすると、小さいベッドみたいなものが並んでいて。横になれるので、1時間くらいずつ交代で仮眠していました。

――どうやって健康を維持してらしたんですか?

西岡 それがけっこう難しくて……。休みの日はせめて健康に、体にいいことをしたいなと思って、料理教室に通ったのが、料理の仕事をするきっかけになってます。

 

 だいたい4日働いて、2日休んでというサイクルが多かったので、2日間の休みにぎゅっと。息抜きみたいな感じではあったんですけど。

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