嵩は大人になるまでは、自分を捨てた登美子の愛を一心に求めていたが、のぶ(今田美桜)という妻を得てからは強く出られるようになり、就職した百貨店を辞めるなと要求してくる登美子を「もうぼくらの人生に立ち入らないでくれ!」と言って、ついに拒絶した。
のぶは、そんな母子の間をつなぐように、登美子に茶道を習い始める。ちなみにやなせの母が茶の湯をたしなんでいたというのは史実で、母はもともと高知の豪農の娘だが、未亡人となってからは自活するために数々のお稽古事に励んだ。
やなせはこう書いている。
(母親は)残された財産を使い果たさないうちに何とか自活しなければいけない、というせっぱつまった考えからでした。
実家とはトラブルがあって、帰りにくい事情があったようです。
B型の派手な性格だから、あれこれやっているうちに広がりすぎて全くとりとめがなくなり、何とか後年ものになったのは生花と茶の湯のみ。
やなせたかし『ボクと、正義と、アンパンマン なんのために生まれて、なにをして生きるのか』(PHP研究所)
半年間、母子の確執を描いてきた「あんぱん」
しかし、「あんぱん」では、嵩が登美子への思いを込め、母を失った赤ちゃんライオンと子を失った母犬の物語『やさしいライオン』を作っても、登美子は「あんな甘ったるい話」と評価しない。ついに、のぶの母・羽多子が面と向かって「あんたは自分の都合で、嵩さんの気持ちを踏みにじってきたがやろ!」「自分のミエと体裁だけやないですか」と説教。登美子は羽多子とにらみ合ってバチバチと火花を散らすが、結局、嵩とは和解できず、「だから、その歳になっても代表作がないのよ」「もう、漫画家なんかやめちゃいなさい」と捨てゼリフを吐いた。
その後も、登美子は素直になれず、ミュージカル「怪傑アンパンマン」も劇場に見に来ていたのに、嵩には会わずに帰っていった。そんなツンデレで、素直ではないところが、ばいきんまんに重なる。