不安感が高い人ほどADHDっぽく見えてしまう

不安なときほど、自分の状態を指し示す概念を欲するのは人の心理です。自信がない人ほど、それを欲するのも自然なことです。そしてそういう不安が高い人ほど、ADHDのスクリーニング検査で得点が高まることがあるようです。それにより誤診されたり過剰診断につながったりするとの報告が、Arij Alarachi氏ら(Assessment誌、2024)によってアメリカの心理学系ジャーナルに掲載されました。

この研究は、不安障害と診断されて通院している人に診断基準を基にして作成したチェックリストで自己申告してもらうと、約40%の人がADHDの診断基準Aを満たしたというものです。しかし実際には、ADHDの臨床的特徴を満たしたのは約3.4%に過ぎず、ADHDの過小評価と現行の診断基準には問題点があるという文脈で論じられています(註:研究サンプルの偏りに依拠した数値のため、一般化には注意が必要)

が、その一方で、過剰診断や誤診につながるさまざまな可能性も指摘しています。「完璧主義や不安による集中力低下」「学校や職場での配慮を目的とする報告」「トラウマやストレスによる実行機能障害がADHDに似る」などです。

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これは筆者の現場での感覚とも一致しています。大人にしろ子どもにしろ、不安感やストレスが高い人ほど発達障害に見誤られてしまうのです。

これからの検証に期待したいところですが、過剰診断と誤診による本来は不要な薬物療法での損失、誤ったラベリングによる自己成長機会の損失なども、研究で報告され始めています。

「私、発達障害かも」と思ったら

では、発達障害かもしれないと思っている人はどうすればよいのでしょうか。

もちろん、本当に発達障害が隠れている可能性もあるので、きちんと問診・検査してくれる医療機関や民間カウンセリングルームを利用するのがよいでしょう。ある程度の期間は経過観察してくれるところを選ぶべきです。経過観察している最中に自分のことを話し、また聞いてもらえる体験から不安が減少していき、落ち着いた生活を取り戻すことは十分に可能だからです。