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そして本当に発達障害だとしても、いまはできることがあります。特にADHDだと薬物療法が有効な面もありますが、自信のなさや不安などにはカウンセリングなどの心理的支援を導入する価値とその有効性が示されつつあります。こうしたものを組み合わせながら環境調整していき、できるだけストレス機会を低減していくのが重要です。
いずれにしても、まだまだ日本では、こうした心理的支援の活用がなされていない現状があります。
診断名を手にする以外にもこころが安らぐ方法はある
なぜ発達障害だと思いたいのかの根本的な部分を見ていくと、これまでに気づかなかったこころの問題も見えてくるでしょう。ここまでに述べてきた不安や緊張、焦りなどです。
こうした部分を心理療法を通して見ていき、以前よりも人生が豊かになっていった人たちを筆者は少なからず知っています。
事例の森田さんもその一人で、発達障害だと思いたい気持ちの裏には不安と緊張があって、それは生育歴や家族との関係に問題があったと知り、乗り越えていきました。気持ちを話していき、それ受け止めてもらい、自己肯定感が育ったのです。たとえ大人になっていても、これを育て直すことは可能です。少しばかり自分に自信が持てるようになると、発達障害という鎧を身につける必要もなくなるのでしょう。
発達障害という社会的な概念が、現代では生きづらさの説明に一役買っていると言えるのではないでしょうか。
植原 亮太(うえはら・りょうた)
公認心理師、精神保健福祉士
1986年生まれ。汐見カウンセリングオフィス(東京都練馬区)所長。大内病院(東京都足立区・精神科)に入職し、うつ病や依存症などの治療に携わった後、教育委員会や福祉事務所などで公的事業に従事。現在は東京都スクールカウンセラーも務めている。専門領域は児童虐待や家族問題など。著書に第18回・開高健ノンフィクション賞の最終候補作になった『ルポ 虐待サバイバー』(集英社新書)がある。
公認心理師、精神保健福祉士
1986年生まれ。汐見カウンセリングオフィス(東京都練馬区)所長。大内病院(東京都足立区・精神科)に入職し、うつ病や依存症などの治療に携わった後、教育委員会や福祉事務所などで公的事業に従事。現在は東京都スクールカウンセラーも務めている。専門領域は児童虐待や家族問題など。著書に第18回・開高健ノンフィクション賞の最終候補作になった『ルポ 虐待サバイバー』(集英社新書)がある。
