約半世紀続くSFホラーの金字塔『エイリアン』シリーズが今、再びアツい。

 1979年の第1作から4作目まで続編が作られた後、世紀を跨いで始祖リドリー・スコットが再びメガホンを取って前日譚が2本作られたが、ここまで長く続くとライト層には取っつきにくく、マンネリ化で恐怖や不気味さも次第に薄れてしまうもの……。しかし、昨年公開された新作『エイリアン:ロムルス』(ディズニープラスなどで配信中)は過去作をオマージュしつつ現代風にアレンジした“総集編”とも言うべき圧巻の出来だった。シリーズは息を吹き返し、また新たな物語が始まろうとしている。

 そうして満を持して配信されたシリーズ初のドラマ『エイリアン:アース』(ディズニープラスで独占配信中)。制作はエミー賞やゴールデングローブ賞を総なめにしたあの『SHOGUN 将軍』を手掛けたディズニー傘下のFX。制作費は超大作映画並みの約350億円。全8話で1話あたり約40億円を投入する力の入れようだ。辛口レビューサイト「ロッテントマト」の評論家スコアは驚異の95%という高評価を叩き出している。

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 今回のドラマでは物語の設定も大幅にアップデートされている。舞台は地球。しかも凶暴な宇宙生命体がなんと5種類も持ち込まれるのだ。ゼノモーフと呼ばれるお馴染みの男性器をモチーフにした獰猛な生物はもちろん、さらに不気味でタチの悪い新種が襲来する。蓑虫のように粘性の糸を扱い、人間の血を吸ってマダニのようにパンパンに膨れ上がる吸血生物。小さなタコのような体に目玉がくっついた生物は、他の動物に取りつき宿主の“目”となって行動を操る寄生体だ。いずれも生態や捕食行動は謎だらけで、観客は新鮮なスリルに身を委ねられる。

©佐々木健一

 一方、そんな宇宙最凶生物たちと対峙する登場人物もなかなかの曲者揃いだ。物語の重要な鍵を握るのは、3種類の“不死”の存在。「サイボーグ」は体の一部が機械化した人間。密命を帯び、目的のためなら非情な手段も辞さない冷酷さを併せ持つ。「シンセ」(合成人間またはアンドロイドとも)は人工知能を有する賢くて命令に忠実な人間型ロボット。そして、新キャラクターの「ハイブリッド」は不治の病の子どもの意識が移植された人間型ロボットだ。中身は幼い子どものままだが、人知を超えた頭脳や驚異的な身体能力を備えている。主人公のうら若き女性ウェンディも“ハイブリッド”。見た目に反し、あの恐ろしいゼノモーフを刀1本で切り裂いてしまうほどの怪力の持ち主だ。これまでは凶暴な宇宙生命体に一方的にやられる構図だったが、今作は人間の姿をしながら“不死”である彼らも残忍で得体の知れない存在(=エイリアン)のように思えてくる。

 ドラマ冒頭には、こんな意味深な一文が……。

「市場を制する商品を生む企業が宇宙の支配者となる」

 そもそも『エイリアン』シリーズは最凶の地球外生命体を“商品”として兵器利用しようと目論む企業の思惑から惨劇が起こる物語。凶暴な宇宙生命体に加え、“不死”の存在さえも裏で操ろうとする「人間」が最も恐ろしい存在だというのは一貫して変わらぬようだ。

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