驚異的な不動産価格

「江南三区にあるマンションはソウルでもいちばん高い価格帯だから、住むなら手狭なマンション、それでもよほどの資産がないと手が出ません。他地域で新入生の多いところを探しても、たいていはよい学習塾があったり、江南ほどではなくてもソウル市内のマンションは平均で10億ウォン(約1億円)くらいするから、借りるにしても相当な財力がないと厳しいです」

 江南三区のマンション価格帯(広さは70~200平方メートル)は2~8億円ほど。賃貸でも、この地域だと7000万~1億円台の「チョンセ」が必要になる。

「チョンセ」は入居する際に支払う、韓国独自の保証金のようなもので、多額のチョンセを支払う代わりに月の家賃がなかったり、割安で借りられたりする。金利が高かった時代の名残で、家主は保証金を運用するなどして利益を得る仕組みだ。退居の際、全額が返金される。

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 2024年、ソウル市内の小学校の新入生数は、区域によって差が大きく出た。20人にも満たないところもあれば、江南三区では200人台のところもあった。

 春が近づくと、子育て情報を交換するコミュニティサイトには親たちの様々な相談事が投稿される。のぞいてみると、こんな書き込みがあった。

「3年後に子どもが小学校に上がるのを機に引っ越したいと計画を立てています。ただ、ソウル市内の小学校でも新入生が減っているというニュースを聞いて、友だちができないのではないかと心配。江南以外で生徒数の多い小学校がある地域はどこでしょう」

 逆に生徒数が多くて内向的な子どもが馴染めるかどうか心配だという投稿もある。

「共働きなので、子どもがひとりでも歩いて行けるところに引っ越してきたのですが、登校する時に生徒があまりにも多くて心配になりました。子どもの性格を考えると、生徒数が少ないところに行かせたほうがいいのかと思ったりしましたが、社会性も考えないといけないのでどうしたらよいでしょう……」

 ふたつとも数人が返信をつなげていて、前者には、「新築マンションがあるところは生徒数も多いけどそうじゃないところは少ないです」という書き込み、後者には、「子どもの意見も大事だと思いますよ。生徒数が少ないとみんなと仲良くなれたりしますが、大きな社会生活への適応性が落ちるかも」など、みな真摯に答えていた。