大峙洞に行くと、乳幼児を対象にした学習塾の看板を目にする。学習塾に通い、めでたく4歳考試で念願の英語幼稚園に入園した後も安心はできない。小学校に上がる前に、もう1段階上の英語塾にレベルアップするためのテストを受ける準備に入る。これが「7歳考試」だ。そうやって、塾の階段を上っていく小学生は、4年生の時には中学校の課程を終わらせ、5年生の時には高校1~2年生の数学の課程まで学ぶ過剰なカリキュラムを受けさせられている場合もあるという。

 また、医学部専門の塾も人気で、小学生向けの「医学部塾」のレベルテストでは、小学2~3年生向けなのに、高校1年生水準の内容が入っていることもあるといわれる。

良い塾に入るための引っ越し

 ソウル市内でもどこに住むかは社会的なステータスと密接に関わっているが、子どもを持つ家庭ではここに「教育」が絡んでくる。大峙洞を筆頭として有名塾が集中する地域があり、翌春の新学期に合わせて秋頃から「孟母三遷」よろしく、引っ越しに向けての動きが本格化する。

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 引っ越しのタイミングは、かつては子どもが小学校から中学校に上がる頃だったのが、最近では幼稚園から小学校に入学する頃にする人も増えてきている。とある不動産会社のオーナーはそう話し出した。

「子どもを狙った犯罪も増えているし、学校との距離は近いほど安心できます。最近は少子化でクラスに友だちがいないことや教育インフラを心配する保護者も増えました。友だちがいなければ社会性も身につかないし、勉強する環境も劣ると心配していて、引っ越し先の条件として同級生の生徒数が多いかどうかも決め手のひとつになっていますね」

 また、通学路での交通事故がニュースになった年があり、最近では小学校が車道をはさまずに居住地とつながっているマンションも好まれているという。

 韓国で有名な進学塾「鍾路学院」が調査した「2024年度小学生純流入地域」を見ると、新入生数が多いのは、江南三区や伝統的に名高い塾がある地域、そして江南区の隣にあり、新築マンションが建ち並ぶ、子育てに人気のエリアだった。

 ソウルきっての富裕層地域である江南三区には、特に有名な講師がいる名高い学習塾が集中しており、「塾の聖地」ともいわれる。よい塾、結果を出している塾に通わせることが居住の目的になる。そして、それにより、不動産価格も上昇する。