東京都が工事を進めているが…

 近くの立会川では都が大工事を行っている。

 開渠部の月見橋から河口までの地下に「雨水放流管」(全長0.8km、流量毎秒45t)を、そして中流の暗渠部から河口までには下水道の「第2立会川幹線」(同7.07km、流量毎秒25t)を建設しているのだ。両者は河口部で集約し、0.9km先の勝島ポンプ所で京浜運河へ放流する。立会川の河口は勝島運河だが、同じ東京湾でももう少し先の運河に流すのだ。

月見橋では河口へ雨水放流管を建設する工事が進んでいた

 立会川河川整備計画によると、開渠部の流量は毎秒15t。上記の2系統が完成すると、毎秒45tと毎秒25tが加わる。「立会川」の雨を流す能力は相当にアップする計算だ。

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 ただ、河口部で2系統の雨を集約する地点の工事が難航しており、いつ完成するかは精査中という。

 その工事が行われている近くで、ボラが群れをなしていた。濁った水の中に黒い魚影が次々と見えた。

水が汚れていて分かりにくいが、ボラが群れをなしている

 立会川の河口部は下水と切り離されているのに水質が悪い。上流から水が供給されない一方、潮の満干の影響を受けて淀むからだ。

 都と品川区は環境改善に力を入れている。

 月見橋でちょろちょろと流れていた透明な水は東京駅からの導水だ。総武線の地下ホーム建設で湧出した水を引いている。

月見橋の下で暗渠から透明な水が流れ出ていた

 川底は酸素が足りないことから、品川区が高濃度酸素溶解水を流している。(しゅん)(せつ)も行った。

 ボラが生息できるようになったのは、こうした効果もあるのだろう。カメもいる。

 だが、抜本的な改善は難しく、取材に訪れた日も潮が満ちてくるのに伴い、白濁が進んだ。

立会川。潮が満ちてくると、見る間に白濁した。

 立会川は気の毒な川だ。

 宅地化で水源はなくなり、大半はふたで閉じられて下水道になった。流れているのは人間が出す汚水だ。河口部でも白濁が続く。一方、豪雨になれば気候変動と都市化で一気に流れ込むようになった雨を受け止めなければならない。あふれたり、呑み込めなかったりすると、「立会川のせいだ」と恨まれる。

 濁った水の中を泳ぐボラを眺めていると、なんだか申し訳ない気持ちになった。

最初から記事を読む 「東京の地下には“見えない川”が流れている」61年前にコンクリートで封印され…目黒区〜品川区の約6.5キロを流れる“暗渠河川”に隠されたヒミツ

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