雨水舛をふさいだ“意外なモノ”
雨水舛には日頃からゴミをためないようにしておくだけでなく、豪雨時は落ち葉や流出物で詰まるのを防がなければならない。だが、「設置場所を知っていたのは地元でも1~2人だったので、できるだけ多くの住民が知っておく必要があると痛感しました。浸水が始まってから探しても、水が濁っているのでどこにあるか分からないのです。あまりに深く浸水してからでも手が届きません。夜間も無理でしょう。今回は夕方の豪雨で、しかも1時間ほどで上がったので、何とかなりました。今後の雨は1時間で済むとは限りません。貴重な教訓が得られたので、地域の皆で次に備えたいと思います」と噛みしめていた。
近くでは、わずかな高低差で川のようになった場所もあった。「店舗の看板や駐車場の入口に置くステップが流れて来て、雨水舛をふさぎました。このためさらに水が深くなりました」と暗渠上の花壇をボランティアで手入れしている60代の男性が語る。
「子供が多い地区です。登下校時などに重なったら、一気に浸水して流れるから危ないのではないでしょうか」と心配していたが、暗渠上の公園で遊んでいた小学1年生の子と母親は「3年前に引っ越して来て、浸水しやすい場所だと知りませんでした。ここも『川』の上なんですか?」とびっくりしていた。
「マンホールから水がボコボコと」
暗渠上をさらに歩く。公園化された区間が続き、「立会川」は東急大井町線の荏原町駅の下をくぐる。駅の向かい側に出るとガラリと景色が変わり、広い歩道に自転車専用レーンが設けられていた。
この辺りも被害に遭った。
「荏原町公園は膝まで浸かり、商店も浸水しました。近くではマンホールがボコボコといったり、吹き出したりした箇所がありました」と町会で活動している男性が語る。
当日の「立会川」の様子をデータで確認すると、この公園付近の「中延」という地点では午後3時10分から40分間にわたり「危険水位」を超えた。そのうち10分間程度は「天端水位」も超過した。川なら氾濫だ。下水道の立会川幹線は満管になり、あふれたとも考えられる。
歩道と自転車専用レーンは第2京浜国道(国道1号線)まで続く。そこを渡ると、また一方通行の車道が復活した。暗渠の構造のためだろう、6tの重量制限がある。
JR横須賀線の西大井駅に近くなると、立会道路が周囲より高くなっていた。コンクリートで川にふたをする過程でそうなったようだ。
「こうした場所では下水道が満管にならなくても雨水が呑み込めなくなる恐れがあります」と下水道局の担当者が語る。
これは通常の河川と同じだ。川の水位が高くなった時、支川の水位が低いと水が流れ込まなくなるどころか、逆流してしまうことさえある。背水(バックウォーター)現象という。「同じことが下水道の幹線と枝線の間でも起きるのです」と前出の担当者は言う。









