〈あらすじ〉
1918年、列車でビルマのラングーンに着いた大英帝国の公務員エドワード(ゴンサロ・ワディントン)は途方に暮れていた。7年も会っていない婚約者のモリー(クリスティーナ・アルファイアテ)がついに結婚のためにロンドンからやって来るのだ。決心がつかないエドワードは、彼女が乗った船が港に到着する寸前、衝動的にシンガポール行きの船に飛び乗る。そして彼女から逃げるようにバンコク、サイゴン、マニラ、大阪へ――。
一方、エドワードの置き手紙を見たモリーは、迷うことなく彼を追うことを決意。旅の途中で彼女に一目惚れした富豪のサンダース(クラウディオ・ダ・シルヴァ)にプロポーズされたり、病に倒れたりしながら、彼を追い続ける。
〈見どころ〉
“映像の魔術師”の異名を持つゴメス監督が選んだのは1918年という古い時代設定と、現代アジアの映像のミックス。さらにモノクロとカラーを効果的に織り交ぜて表現。また地域ごとに言語を変えてのナレーションも独特な世界観を作り出している。
美しく幻想的でユーモラスなアジアが舞台の“いたちごっこ”
ポルトガル映画界を代表する鬼才ミゲル・ゴメス監督最新作。“逃げる男と追う女”という古典的な物語を1918年のビルマから始まって中国・重慶までの旅で描く。2024年カンヌ国際映画祭監督賞を受賞。
-
芝山幹郎(翻訳家)
★★★☆☆魅力的なショットに思わず身を乗り出しかけたが、どこか釈然とせずに坐り直してしまった。西洋人のとらえたアジアが「沼」や「湿気」の変奏曲に傾いていくのは、残念ながら類型的。芸術の重石が映画の足を引っ張っている。
-
斎藤綾子(作家)
★★☆☆☆夢か現実か、モノクロもカラーも映像は美しく、展開はうっとうしい。何が魅力か問われたら、底の見えない沼にゆっくり落ちていくような奇妙な緩さか。アジアの日常を、混沌の不可思議という優越の眼差しで描いている。
-
森直人(映画評論家)
★★★★☆ヴィンテージ画材で描き上げた世界地図の中のアジアを旅する感覚。白人男女の古風なスクリューボール・コメディの図式を地政学的に変換。夢の様な幻想性や大阪のドン・キホーテの店先など、様々な情景が交ざる万華鏡だ。
-
洞口依子(女優)
★★★☆☆旅行ドキュメンタリー、ヨーロッパ人の妄想にある植民地物語の二層。時代と歴史、現代と過去を巧みに絡み合わせる手法は『熱波』でも感じたが、今回は自称旅好きが憧れるコロニアル趣味やダンディズムに傾き過ぎて冗長気味?
-
今月のゲスト
柳亭小痴楽(落語家)★★☆☆☆とても抽象的な映画で、コメディ要素が役者さんのセリフ・演出からジワジワ窺えるのだが気味の悪い演技・描写も笑いに捉えられる。どこまでも明るいモリーが素敵。仲間とまったりお酒を呑む時のBGMにも最適!
りゅうていこちらく/1988年、東京都生まれ。落語家。若手真打の一人としてメディアでも活躍中。NHKラジオ第1『小痴楽の楽屋ぞめき』(毎週日曜13:05〜)メインパーソナリティー。また著書に『令和の江戸っ子まくら集』などがある。
- 最高!今すぐ劇場へ!★★★★★
- おすすめできます♪★★★★☆
- 見て損はない。★★★☆☆
- 私にはハマりませんでした。★★☆☆☆
- うーん……。★☆☆☆☆
©2024 – Uma Pedra No Sapato – Vivo film – Shellac Sud – Cinéma Defacto 配給:ミモザフィルムズ
INFORMATIONアイコン
『グランドツアー』
監督:ミゲル・ゴメス(『熱波』『アラビアン・ナイト』)
2024年/ポルトガル・伊・仏・独・日・中/原題:Grand Tour/129分
10月10日(金)~
TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国公開
https://mimosafilms.com/grandtour/




