東京読売は翌10月23日付朝刊でも「婦人生活」面に「ハイミス犯罪の周辺」という記事を掲載。その中では、評論家・上坂冬子が「39歳ぐらいから42~43歳のハイミスOLは戦争直後のパニック時代に企業に採用された。彼女らの上の世代は『復員帰り』と結婚。後の世代は職場などで恋愛結婚をした。Oの世代がさみしく取り残された形となった」と述べた。

紙面に「ハイミス」の活字が躍った(東京読売新聞)

 同日付京都夕刊も「O転落の軌跡 失われた青春、焦り」の見出しで「青春を取り戻す相手として、命を懸けた男のワナにわけもなく陥り、獄窓という“恋の代償”を支払わされた悲しい女のサガがにじみ出た」と書いた。

 それに対し、10月26日付東京読売の投書欄「気流」では、28歳主婦が「本当に仕事に情熱を持って独立していても、二十代後半に差し掛かると“ハイミス”のレッテルを否応なしに張られる」「時代の流れの根底には、いつも女性にだけ、こういった偏見が背負わされていく」と反論した。事件では「ハイミス」がキーワードの1つとなった。

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「ハイミスは偏見」の投書も(東京読売新聞)

 10月23日付大阪朝日新聞夕刊は、Oの逃亡前、Yが「睡眠薬を用意しておけ」と心中をにおわせてしつこく金を絞り取り、挙げ句にOを捨てたと報じた。10月23日付京都朝刊の「凡語」は、「何億円もだまし取って、ほとんど全てを男に渡して捨てられた後、別の男を頼り、人目を避けて暮らす。全く(せき)とした*心象風景を思わせて余りある」と記述。
*静まり返る

 同じ日付の東京読売1面コラム「編集手帳」も、「恋のとりこになって、くだらない男に数億円も貢いだ女の哀れ」を指摘した。東京毎日1面コラム「余録」は「犯罪の陰に男あり」と書いた。どれもOに対する同情論のようだが、時代的な問題もあるにせよ、男社会の上に立った「愚かな女」という見方であることは否めない。

男は3.6億円を競艇に、妻子との家も購入

 10月24日付朝刊各紙には一斉にYが遣った金の内訳が載った。それによれば、Oが滋賀銀行から引き出したのは7億円。Yはそのうち3億6000万円を競艇に遣っていた。さらに自宅購入費、造園費のほか一家の生活費に毎月100万円を充てていた。滋賀県警の捜査本部はYの親族の立件も検討したが、立証が難しいとして見送った。