この頃の私は現役時代よりも10kg増え、体重は60kgオーバー。とはいえ169センチの60kgなんて、実際のところものすごいデブというわけではない。だから私はわざわざ目を細めて口をすぼめ、顎をひいて二重顎を演出し、スカートもミニサイズを着用し、とにかく通常より太って見せることに専念した。
ハート型のサングラスにパラソル、ふりふりのミニスカートというアイドル衣装で、「久しぶり~」とハイテンションで登場した私。ステージ上での行動は、姉さんが細かく指示を入れた“台本”があった。
セットリストは不倫をネタにするようなラインナップで大大大暴走。もともとお世辞にもうまいとは言えない歌唱力で客席の反応を困らせたうえ、「疲れちゃった」と言って途中で歌うのをやめたり。着替えたセーラー服の衣装では三段腹がよく見えるようにトップスはあえての短い丈だったのは姉さんの戦略だ。スカートもあえて小さいXSサイズにファスナーも閉めずに開けっ放し。服が入らない様子をアピールすることで、少しでも“激太り”を印象付けた。
まさにデジタルタトゥーが刻まれた瞬間だ。
当時は「デジタルタトゥー」という用語もなかったけど、炎上もデジタルタトゥーも、タレントとしての先駆者は自分なんじゃないかと思う。“人に語れる壮絶な体験があればいいのに”なんて思っていたグラドル時代の自分と、もし話せるものなら話し合いたい。
念願の「注目」を浴びても…
このライブは、一大センセーションを巻き起こした。
〈突然の芸能界引退&激太りの小阪由佳が超過激ライブ‼ 現役グラドル暴露と見事な“三段腹”披露〉(オリコンニュース)
〈プッツンアイドル⁉ 小阪由佳が大暴れ〉(リアルライブ)
〈小阪由佳 飛び出したのは三段腹だけじゃない 整形アイドル実名暴露〉(東京スポーツ)
歌っている間も撮影タイムも、ものすごい数のフラッシュを焚かれた。久しぶりのカメラの前で、トップスをまくってみせるサービスショットもしてみせた(姉さんの台本どおり)。カメラマンが喜ぶようなショットは得意だったはずなのに、過激な言動とは裏腹に、裾をたくし上げる私の手は小刻みに震えていた。
舌っ足らずの口調でどこを見てるのかわからない虚ろな目付き、体じゅうの発疹。異変は明らかなのだが、記者たちに〈ブログのキャラは本当だったんだ〉と思わせるには十分すぎた。
私はといえば、念願の「注目」を浴びたはずなのに、嬉しくもなんともなかった。こんな注目のされ方で、良い訳がない……。
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