米中関係が緊張感をますなか、現代の「半導体戦争」は今後どんな展開を見せるのだろうか。2025年日経平均5万円突破を予見した話題沸騰のエコノミスト、エミン・ユルマズ氏が新著『エブリシング・ヒストリーと地政学 マネーが生み出す文明の「破壊と創造」』を上梓した。激動の現代情勢を経済✕地政学で読み解く!

(本稿は、前掲書から一部抜粋したものです)

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中国製半導体は世界を制するのか

 21世紀に入って米中の覇権争いが緊張感を増すなかで、中国は半導体の自給自足を国家の最重要戦略のひとつに掲げている。

「メイド・イン・チャイナ2025」に代表される産業政策の下、数兆円規模のファンドを用意し、国内の半導体企業に対して資金援助を行っている。2025年までに主要な半導体の国内自給率を70%にまで引き上げることを目指したこの計画は、世界の半導体市場における米国の覇権に対する挑戦だ。

 2024年には半導体産業に特化した巨大な官製ファンドに、過去最大となる3440億元(約7.4兆円)の基金を用意し、上海微電子装備集団(SMEE)の開発するリソグラフィ装置やファーウェイのAIアクセラレーターなどへの集中投資が予想されている。

 確かに、中国の技術力の進化は目覚ましく、世界をリードしている様々な先端技術を有している。オーストラリア戦略政策研究所のレポートによると、(1)先端材料と製造、(2)人工知能、コンピューティング、コミュニケーション、(3)エネルギー、環境、(4)量子技術、(5)バイオテクノロジー、遺伝子技術、ワクチン、(6)センシング、タイミング、ナビゲーション、(7)防衛、宇宙、ロボティクス、輸送、という7ジャンルにおける44の最先端技術のうち37で中国が上位にランクインしている。そして、残り7つが米国だ。

 この調査は各分野における影響力の高い学術論文の発表数に基づいており、必ずしも現在の産業技術力や市場シェアを反映していないが、これは中国の先端技術分野への莫大な投資と将来のポテンシャルを示すものだ。

 このような状況を目の当たりにすれば、半導体分野においても中国が世界をリードすると考える人がいても無理はない。

エミン・ユルマズ氏 ©文藝春秋