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台湾有事の地政学的リスク
仮に中国が台湾に侵攻したら、単に半導体の供給が止まるだけでは済まされないだろう。TSMCではアップルのiPhoneプロセッサから、エヌビディアの最新AIチップ、アメリカのF35戦闘機で使われる、現場でプログラムできる集積回路のFPGAまで、世界最先端のチップが作られているのだ。
台湾有事に際してアメリカが直接中国に対して軍事行動を起こすかどうかはわからないが、最先端の軍事技術を支える半導体拠点が中国に押さえられてしまったら重大な脅威となることは確かだ。TSMCが日本の熊本県などに半導体工場を建設したのは、有事に備えて、日本を疎開地にしている可能性が高い。
さらにTSMCは2025年4月からアリゾナ州に、アメリカ国内では3番目になる半導体工場を建設中であり、また欧州事業拡大の一環として、ドイツのミュンヘンに設計センターを新設する。
今後、台湾が中国軍の制圧下におかれた場合、アメリカは強い抑止効果を狙ってマラッカ海峡封鎖に動くシナリオも考えられる。中国は石油の輸入の4~5割を中東に依存しており、その石油を運ぶタンカーの大半は(マレーシア半島とインドネシアに挟まれた)マラッカ海峡を通過するからだ。
現代の半導体開発戦争は、常にこうした地政学的なリスクをはらんでいるのである。