犬や猫だったら許されないことも、虫なら許される
――鉄道好きでいえば「乗り鉄」「撮り鉄」のように、虫好きにもジャンルがあるのでしょうか。
蜂丸 虫好きは大きく分けて「採集」「標本」「飼育」のタイプがあるんですが、自分は特に飼育に惹かれています。
――飼育する魅力はどんなところに?
蜂丸 繁殖させる過程が面白いです。たとえばダンゴムシなら、普段は土の中に隠れていますが、たまに覗いたときに明らかに数が増えていると、すごく嬉しいんです。
新種が誕生するロマンもあります。偶然「奇形」として生まれる個体がいて、たとえば黄色と黒のしま模様のダンゴムシの中に、突然真っ黄色の個体が現れたりするんです。そういった子たちの繁殖を重ねて固定していくと、別の名前の新たな種類として扱われることもある。そういう未知の可能性にすごくワクワクします。
――飼育している昆虫を観察して楽しむこともあるんですか?
蜂丸 もちろん。単純に餌を食べている姿を眺めているだけでも面白いですし、ムカデの脱皮の瞬間は自然界でめったに見られないので、家で飼っているからこそ貴重な瞬間に立ち会える。ストレスがあると巣を作らない虫もいて、うちで巣を作っているのを見ると、「よかった、作ってくれた!」とうれしくなります。
――虫を繁殖させると、すごい数に増えていきそうですね。すべて飼い続けるのは大変では?
蜂丸 数が増えた場合は、譲渡したり販売したりしています。虫の場合は、犬や猫といった一般的なペットと違って交換したり、譲ったりする文化が根付いているんです。「たくさんいるなら、よかったら交換してよ」みたいなやり取りはよくあって、どこかポケモン的というか、集めて、増やして、交換する楽しさが虫の飼育にはありますね。
虫に愛着はほとんどない
――他のペットなら、交換なんてあり得ませんもんね。
蜂丸 僕も犬や猫は普通に好きで、うちではカエルや爬虫類も飼ってますが、その子たちは「ペット」だと感じられる。つまり愛着があるんですけど、虫は極端な話、愛着がないなと。そう感じるのは「まぶた」がないからかなと考えていて。
――というと?
蜂丸 まぶたがあると、目を開けたり閉じたりする動作に「表情」が生まれるんです。その仕草を見ると、「かわいいな」と思える。でも昆虫にはまぶたがなくて、表情の変化が一切ないので、どうしてもペット感が薄いんです。
虫は人になつくこともありませんし、人間を認識しているような素振りもない。もちろん大切に育てたい気持ちはありますが、一般的なペットみたいに感情的なつながりはほとんど感じません。なかには「かわいいね」と話しかけて、ペットのように接している人もいるみたいですけどね。
それに、虫は寿命がとても短くて、3カ月も経たないうちに亡くなる個体も多いので、感情移入できる期間も限られてしまう。たとえば、いま飼っているムカデの中に寿命が3~4年くらいの個体がいて、それには多少思い入れも生まれてきます。
――虫が亡くなったときは、お墓をつくって弔ったりするんですか?

